さらには、クライアントに勧められて1200万円で購入したゴルフ会員権はゴルフ場の倒産により紙切れと化し、大手通信メーカーに勤務する弟から勧められた同社株1600万円も暴落という不運も重なり、老後資金は5分の1までに目減りしてしまったそうだ。

「親子2代で、同じ証券会社に損をさせられるとは、よほど才覚がないんですね」と、Aさんは自嘲気味に語る。

「それ以来、投資活動は一切せず、残った資金と年金で慎ましく生活しています。消えてしまったお金が恨めしいですなあ」

“お願いセールス”“土下座営業”

 2017年12月24日放映のNHK『クローズアップ現代+』では、低金利政策が銀行の収益を揺るがしているという現状にあって、若い銀行員が、上司から課せられるノルマに追いつめられるかたちで、顧客ニーズに合わない商品を売ってしまう実態を紹介していた。力を入れているのは、外貨建て生命保険など手数料が比較的高い商品だ。金融庁によると、地方銀行の17年3月期決算を分析したところ、過半数が本業で赤字に陥っているという。

 最近まで地方銀行で営業を担当していた20代の女性が内情を暴露する。多くの銀行員が行っていたのは、“お願いセールス”だったという。高齢者の自宅に何度も通いつめ、世間話などをして信頼を得た後に、上司から課せられる窮状を告白して、情に訴えて契約をしてもらうやり方だという。

「最終的にはお客さんが折れるみたいな感じで、お客さんのニーズではない、こっちの銀行都合でのお願いですよね。ノルマから逃げたいということしか考えなかったですね」

 お願いセールスの一環として、“土下座営業”もある。

 金融商品取引被害や投資取引被害などの問題に積極的に取り組んでいる、あおい法律事務所の荒井哲朗弁護士は、相談者にこう聞いたことがある。

「なぜ、こんな危険な商品を購入したんですか」

「だって、『お願いします、お願いします』と言って土下座するんですもの」

 特に高齢者は、大手銀行や証券会社といった社会的信用度の高いネームバリューに絶対的信頼を寄せる傾向にある。

「高齢者の場合には儲け話というよりも、『若い子が頻繁にやってきて、一生懸命に言うから』というのが大多数のケースです。親しくなったふりをして、という手口は昔からいくらでもあります」と、荒井弁護士は語る。

 取材をしてみると、金融商品取引の被害者は80代の高齢者が多いことに気づかされる。認知症を患っていない人でも、判断能力は低下する。さらには、ひとり暮らしで相談者がいないとか、情報が入ってこないための知識の欠如や、馴染みになった人と関係を絶ちたくないという弱みにつけこまれてしまうケースが多いようだ。
(文=林美保子/フリーライター)

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