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飛び込み営業をやめて「12年連続顧客満足度No.1」を得たトヨタ自動車販売店

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 時間はかかるが確かな成果があらわれる経営スタイルと、短期間で成長はするが無理が生じて破綻する経営スタイル。会社はどちらの道を選ぶべきか?

 こう問われれば、多くの経営者は前者を選ぶはずだ。しかし、現実には、目の前の売上を重視し、短期的な改革を実行している経営者は少なくないだろう。そこで生じた歪みは、社員やスタッフの肩にのしかかり、「ブラック企業化」も待ったなしという話になりやすい。

 企業において最も重要な財産は「人」だ。

 それを教えてくれる一冊が『会社の目的は利益じゃない 誰もやらない「いちばん大切なことを大切にする経営」とは』(横田英毅著、あさ出版刊)である。

 著者は、トヨタの自動車販売店・ネッツトヨタ南国の設立と同時に副社長に就任し、現在は同社取締役相談役を務める横田英毅氏。ネッツトヨタ南国は、全国300社のトヨタ販売会社で12年連続顧客満足度No.1を誇り、ベストセラーとなったビジネス書『日本でいちばん大切にしたい会社』でも取り上げられている。

 そんな著者が本書で語るのは「経営者は何を一番大切にするべきか」という問題だ。売上至上主義、業績第一が横行する中、同社の取り組みは経営者にとって多くの気づきを与えてくれる。

 企業は何のために存在するのか。著者によれば、「社員とその家族の幸せのため、次がお客様、ビジネスパートナーのため」「そうした人たちを大切にするには、赤字では何もできないから業績を上げる。だから、会社は利益を生まなければならない」という。

 しかし、この言葉の真意を理解する経営者は少ない。

 たいていの人は「社員をいちばんに大切にして、次にお客様、そして業績を三番目に大切にするという考え方でやれば、業績が上がる」と考えるのだが、それでは「業績がいちばん大事」と言っているのと変わらない。

 「社員を大切にする」ということが方便となり、「業績を上げたいから、社員を大切にしよう」という考え方になる。つまり、業績第一の考えからまったく抜け出せていないのだ。これは多くの経営者にとって傾聴に値するだろう。

 ◇

 自動車のディーラーといえば「飛び込み営業」で新規顧客を開拓するのが常識だ。しかし、トヨタネッツ南国では、会社設立2年目から飛び込み営業を一切やめた。一体なぜなのか。それは著者の体験にある。

 著者は、会社設立にあたり、自身で飛び込み営業をしたという。その結果「こんな仕事はやりたくない」と思い、「自分がやりたくないと感じる仕事を、社員にやらせていいものだろうか?」と疑問を抱いた。これが最大の理由である。

 しかし、これには合理的な理由もあった。あるセールススタッフは月に6台を販売していたが、そのスタッフの活動時間の割合を見てみると、飛び込み営業が50%、週末イベントや平日の店頭待機が13%、購入者のアフターフォローが13%、その他事務作業が24%となっていた。

 ところが、成果を見てみると、最も時間を割いた飛び込み営業で売れたのは1台。残りの5台は、店頭待機やアフターフォローから発生した販売だったのだ。

 飛び込み営業は、多くの客から嫌な顔をされスタッフも辛い思いを強いられる。こうした経緯から、営業活動として合理性がない上、スタッフがハッピーになれない営業スタイルをやめたのだという。

 ここで大切なのは、経営者が合理性ありき、売上ありきで考えた選択ではなかったということだ。経営者たるもの、この点を履き違えてはいけないだろう。

 ◇

 本書には、「社員を大切にする」とはどういうことか、その熱い思いを知ることができる。

 その中で、とりわけ興味を引く取り組みが、社員の採用の話だ。

 トヨタネッツ南国では、新入社員の採用に30時間を費やして面談を行っているという。採用にかかる費用は年間1,000万円ほど。同程度の規模の会社の5倍前後だ。そこには、「本当にこの会社に入りたいという気持ちを持って入社してくれる社員を募り、より良い会社に育てていく」という思いがある。

 そうやって入社した社員には、経験や勤続年数にかかわらず、経営会議に参加できたり、上司の決済なしにプロジェクトを実行できたりする「やりがい」のある仕事が待っている。社員にとってこの「やりがい」というものは、給料や会社の肩書き以上に大きなモチベーションになるものだ。

 トヨタネッツ南国は、こうした企業風土を長い時間をかけて築いてきた。それは決して短期的な改革でなし得ることではないものだ。

 最初の問いは「会社とは人を大切にするべきか」「売上や業績を第一に考えるか」という意味だ。本書を読めば経営者にとって最も重要な「人を大切にする」ことの本当の意味が理解できるだろう。
(ライター/大村佑介)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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