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高安雄一「隣国韓国と日本の見方」

韓国政治への大いなる誤解…「国会先進化法」で乱闘イメージ払拭へ

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 国会先進法で変わった点は大きく3つある。第1は議長による職権上程をきわめて難しくした点である(議長は議員の過半数の得票で当選)。職権上程とは、委員会などで審議中の法案を、審議が終了する前に本会議に付議して決を採ることであり、議長が行使権限を持っている。その際には議長は審査期間を指定して、期間内に審議が終了しなければ、議長が職権で議案を本会議に付議する。

 韓国では、常任委員長を与党議員が独占せず、議員数に応じて院内交渉団体たる政党に配分される。また、法案の体系や語句の審査を行う法制司法委員会の委員長も野党に配分される慣例となっている。よって野党が委員長の場合、議案審査を意図的に引き延ばすことが可能であり、与党はこれに対抗するため、議長による職権上程をしばしば行った。

 国会先進化法では、議長による職権上程が、国家の非常事態が発生した場合か院内交渉団体が合意した場合に限定された。前者は有事であり後者も期待できないので、議長による職権上程を使って法案成立を早めることができなくなった。国会先進化法では、議員の3分の2以上の賛成をもって、法案審議の期間を常任委員会は180日、法制司法委員会の体系・語句審査は90日に限定することができることも定められた。しかしながら、3分の2の賛成はハードルが高く、与党が法案成立を早める手段は封じられた。

 第2は常任委員会に案件調整委員会の設置を可能にしたことである。委員の3分の1が要求すれば調整委員会を設置し、そこで法案の調停を行う。委員は6名で構成され、3名は議員数が第一党、残りの3名はその他の院内交渉団体が出す。調整委員会の活動期間は90日であり、調整案の議決は3分の2、すなわち4名以上の賛成が必要である。よって調整委員会での合意は第一党だけの賛成では不可能であるが、調整案が議決されない場合でも法案が廃案になるわけではなく、調整委員会の活動期間である90日が終了すれば、法案審議は次の段階に進む。調整委員会が設置されれば、法案がここで留め置かれ処理に時間がかかるようになる。しかし調整委員会で3分の2以上の賛成を得られなければ法案が廃案になるわけではない点には留意が必要である。

 第3は無制限討論の導入である。議員の3分の1以上の要求がある場合、本会議の審査案件に対して1人1回に限り時間の制限なしに反論を許容することができる。討論を途中で終わらせるためには議員の3分の2以上の賛成が必要である。ただし、韓国では会期不継続の原則を採用しておらず、会期中に議決されなかった法案は次の会期で引き続き審議される(ただし選挙をまたいでは引き継がれない)。ちなみに、法案の無制限討論が行われている途中に会期が終了すると終結宣言が出され、その法案は次回の会期が始まるとともに採決される。

文在寅政権の課題

 以上を勘案すると、国会先進化法によって法案を速やかに通過させることは困難となったが、5分の3以上、あるいは3分の2以上の議席を確保しないと法案を通せない事態となったわけではないことがわかる。いずれにしても、現状では文在寅大統領の出身政党である「共に民主党」が第一党ではあるものの過半数を制しているわけではなく、法案が通りにくい事態に陥っていることは事実である。

 しかし、韓国では5分の3(あるいは3分の2)の賛成がないと法案を通せなくなったわけではなく、昔も今も過半数の賛成で足りることは、お隣の国の政治を理解するための基礎知識として押さえておく必要がある。
(文=高安雄一/大東文化大学教授)

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