大林組はかつて「談合の帝王」と呼ばれた。その経験からか、捜索を受けたときの対応についてのノウハウが身についている。「捜査当局とは争わない」「談合はあっさり認める」という2点だ。その代わり、「これだけは守る」という防衛ラインがある。それは、創業家に責任が及ばないようにすることだ。

 創業家は「君臨すれども統治せず」を貫いてきた。ところが05年6月、社長経験のない大林剛郎会長に最高経営責任者(CEO)の肩書がついた。

 その後、07年の談合事件で、大林氏は会長を辞任し、CEO職も返上した。仮に、この時点で大林氏がCEOに就いていなければ、会長を辞任することはなかったといわれている。経営責任をとるのは番頭たちと決まっていたが、最高経営責任者の地位にある以上、引責辞任せざるを得なくなった。そのため、「つかの間の大政奉還」といわれた。

 大林氏は09年に代表権を持つ会長に復帰したが、CEOという肩書はつけず、元の「君臨すれども統治せず」の体制に戻った。

 リニア中央新幹線の建設工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部の捜査を受けた大林組は1月23日、白石達社長が3月1日付で辞任すると発表。後任に蓮輪賢治取締役専務執行役員が昇格した。

 大林組は07年、大阪府枚方市の清掃工場建設工事をめぐる官製談合を摘発され、当時の脇村典夫社長が引責辞任し、白石氏が後任社長に就任した経緯がある。その白石氏が11年後に再び談合を理由に辞任した。談合の後始末をするために社長になり、談合の責任を取って社長の椅子から下りるという異例の事態となった。

 白石氏は6月下旬の株主総会後に相談役へ退く。リニア工事の土木部門を担当していた土屋幸三郎副社長は1月23日付で辞任した。

 創業家出身の大林氏が引責辞任することはなかった。創業家の責任は不問にし、慣例に従い番頭たちが腹を切って創業家を守ったのである。

 大林組の契約辞退も、どこよりも早かった。昨年12月、徳島県の徳島東署の整備事業を落札した大林組を代表とする共同企業体(JV)が契約を辞退した。その段階で辞退しても違約金は発生しない。リニア談合で大林組の役員が逮捕されて同社が指名停止処分を受けた場合には、10億円程度の違約金の支払い義務が生じる可能性があった。それを見越して契約を辞退したのだ。

 大林組は、社長と副社長の首を差し出してミソギを済ませた格好だ。

 もし、今後のリニア工事の契約で、事件に関与したスーパーゼネコン4社を指名停止(指名回避)処分とすれば、リニア中央新幹線の27年としている開業は、大幅に遅れることになるかもしれない。
(文=編集部)

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