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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

あり得ない失言や言い間違えは、その人のホンネと人柄そのものである

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
あり得ない失言や言い間違えは、その人のホンネと人柄そのものであるの画像1「Gettyimages」より

失言だらけの政治家たち

 政治家の失言がしばしば報道され、批判が殺到し、ときに辞任に追い込まれることさえあるのに、失言騒動は後を絶たない。
 
 なぜか。それは、失言のもつ意味を国民も政治家もちゃんと理解していないからだ。失言が問題にされ、批判にさらされると、“仕方なく”本人が出てきて釈明をする。あまりに批判が殺到した場合は、謝罪し、発言を撤回する。これで一件落着だ。そこでは失言の本質が見逃されている。

 世間を騒がせた近年の政治家の失言を見てみよう。

 憲法改正論議に関して、ワイマール憲法が国民の誰もが気づかないうちに、いつの間にか変わっていた、ナチスのあの手口を学んだらどうかといった主旨の発言をし、批判を招き、不適切だったとしてこれを撤回した政治家がいた。「国民の気づかないところで、そっと憲法を変えてしまえばよい」とでもいうかのような失言を、なぜするのだろうか。

あり得ない失言や言い間違えは、その人のホンネと人柄そのものであるの画像2『「忖度」の構造 空気を読みすぎる部下、責任を取らない上司』(榎本博明/イースト新書)

 東日本大震災に言及した際に、「まだ東北で、あっちのほうだったからよかった」と発言し、激しい批判にさらされた政治家もいた。それに先だち、自主避難者についても「自己責任」だと突き放すような発言をしており、とても復興相という立場の人物とは信じがたい発言が続いたため、ついに辞任に追い込まれた。辞任にまで追い込まれかねない「被災者を冷たく突き放すような」失言を、なぜ繰り返ししてしまうのだろうか。

 観光で稼ぐという話のなかで、「一番のガンは文化学芸員と言われる人たちだ。観光マインドがまったくない。一掃しなければダメだ」と発言し、これが不適切だと批判にさらされ、発言を撤回し、謝罪した。「文化などどうでもいい。金儲けの邪魔になる文化人はいらないどころか害になる」とでも言いたげな失言を、なぜしてしまうのか。

 つい先頃も、国会で在日米軍機の事故についての議論が行われている最中に、「それで何人死んだんだ!」とヤジを飛ばし、あまりに不適切との批判を受け、辞任に追い込まれた政治家がいた。沖縄県民の気持ちを考えたら許されるものではないが、「べつにまだ誰も死んでないのに騒ぐな!」といった思いを匂わすような失言を、なぜしてしまうのだろうか。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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