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マネックス、コインチェック買収の裏の狙い…「再建」が目的ではない

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
マネックス、コインチェック買収の裏の狙い…「再建」が目的ではないの画像1マネックス、コインチェックの買収発表(ロイター/アフロ)

 オンライン証券事業を中心に金融ビジネスを展開するマネックスグループが、36億円でデジタル(仮想)通貨の取引業者であるコインチェックを完全子会社化した。この買収については、マネックスサイドで想定外に支出が膨らむリスクなど懸念は多い。

 ただ、これまでのコインチェックの成長ぶりを見ると、マネックス側にはリスクに見合った成長のチャンスがあると見ているふしがある。買収発表時の2人の経営者の表情に、そうした思惑が表れていた。買収発表の記者会見で、マネックスの松本大社長は、終始、胸を張り自信を示した。それとは対照的に、コインチェックの和田晃一良社長は終始うつむき、表情には不安が見て取れた。和田氏は買収後の自らの処遇、不正に社外に流出したデジタル通貨NEM(ネム)の追加補償を求める訴訟などへの不安があったのだろう。

今日流通するデジタル通貨は“そのまま”では存続しえない

 今日、デジタル通貨ビジネスは、独自のデジタル通貨の開発と、ビットコインなどすでに生み出され一定の認知を獲得してきたデジタル通貨の取引仲介業(ブローカレッジ)、に大別できる。コインチェックのビジネスは後者だ。

 マネックスが同社を買収した理由は、その取引仲介マージン(顧客の求める執行価格に一定の上乗せをして売買を執行することで得られる利ザヤ)の厚さにあるとされる。コインチェックで取引をする際の手数料は、最大で取引金額の10%程度に達する。高い手数料率を徴収することができたからこそ、同社は急成長し、460億円もの補償金を支払うことができた。人気のある商品であれば、人々は手数料の高さを気にしないというのは、重要なポイントだ。

 今後も、デジタル通貨が人々に支持され続けるのであれば、コインチェックの経営を立て直して売却することで利益を得ようとする発想には相応の説得力がある。

 しかし、そう考えるのはあまりに早計だ。銀行などが、価値が安定していて法定通貨との交換レートが一定のデジタル通貨を実用化すれば、預金の引き出しなどにかかる手数料は低下するだろう。大手企業の信用力に支えられたデジタル通貨は、ビットコインなどの裏付けのない(投機対象となりやすい)ものとは根本的に異なる。

 実際に、価値が一定のデジタル通貨が登場すれば、徐々に価値の安定を支える仕組みのない通貨は淘汰されるだろう。それは、近い将来に実現するかもしれない。そうなると、コインチェックが高収益を維持することは難しい。マネックスがコインチェックを買収した背景には、一般的に言われている再建やIPOとは異なる狙いがあると考えるべきだ。

マネックスの買収の背景にある真意

 マネックスの狙いのなかで最も重要と思われるのが、フィンテックビジネスの強化だ。具体的には、ITテクノロジーに精通し、コインチェックのシステムを構築してきた専門家を自社内に取り込み、今後の競争への対応力をつけることが考えられる。

 今日、従来の金融ビジネスとITを融合したフィンテックのビジネスを重視する金融機関経営者が増えている。なかには、ITベンチャー企業との付き合い方が、今後の競争力を左右すると考える者さえいる。

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