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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

最高の英語塾J PREP、創業6年で生徒3千人の秘密…英語ができないだけで多大な損失

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

――というと?

斉藤 学校全体のオペレーションの大きな部分を酒田で実施しています。渋谷や自由が丘に電話がかかってくると、実はそれを受けているのは酒田なんです。教材開発やその印刷発注、3000名を超える生徒家庭への発送などはすべて酒田で行っているのです。ITのシステム開発も酒田を拠点として行っています。東京で実施するより、コスト的な優位がありますし、なにより出身地での雇用貢献ができていると思っています。現在酒田事業所には講師のほかに、サポート・デスクとして20名ほどのスタッフに活躍してもらっています。

――それは実に賢いですね。これから人材雇用はどの業界でもますます難しくなってきます。地方でのオペレーションなら、そのような問題にも対処できるでしょう。

斉藤 実は海外経験や特殊なスキルを持つ人たちが、家族の介護や地域への想いを理由に地元に戻ることが多くあります。この絆を大切に、事業を組み立てるようにしています。教育面でも、全国展開を想定したモデルづくりを行う上で、酒田校で多くの知見を得ています。

国も戦う場も好きなように選んできた、真の自由人

――J PREPの代表をなさる前の斉藤さんの経歴がユニークというか、文字通りの唯一無二です。

斉藤 私は酒田生まれの純日本人です。上智大学では外国語学部で英語を学びましたが、イェール大学の博士課程で学んでいたのは政治学です。故郷の酒田のため、日本のために役に立ちたいと思い、政治学を勉強していました。そもそも比較政治経済学を学んでいた理由は、地域経済を成長させるために何が必要か、探究したかったからなのです。ちょうど現職議員が政治資金疑惑で辞職したこともあり、衆議院議員の補欠選挙に立候補して当選したのが33歳のときのことです。

――でも、またイェール大学に戻られた。

斉藤 翌年に総選挙となり、私は落選してしまいました。所属が民主党だったということもあり、その次の選挙を目指すのは断念しました。06年にイェール大学で博士号を取ることができました。それからアメリカの大学で教鞭を執りはじめて、08年から4年間、イェール大学で政治学を教えていました。博士論文は『自民党長期政権の政治経済学――利益誘導政治の自己矛盾』(勁草書房)として上梓させてもらいました。

――この本は、第54回日経・経済図書文化賞を受賞しています。

斉藤 J PREPを創業してからは、英語教育の本に傾注しています。最近著したのは『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て!』(ダイヤモンド社)という本で、すべての親御さんに読んでいただきたいと思っています。

規模より質を、何より在籍者の満足度を

――新校舎、大箱への移転という大きな節目を通りました。この後はどのように展開していくつもりですか。

斉藤 この校舎と自由が丘、酒田の3拠点で最大4500名の生徒に授業を提供することができると考えています。現在、学童保育を合わせて3600名まで達成しました。しかし生徒数の最大化を目的に経営を行っているわけではありません。規模を追いかけるのでなく、あくまで在籍している生徒、そして保護者の満足度を高めることを目標としたいと思っています。

――地域的な展開は次の段階とすると、教育プログラムの新商品はどうですか。

斉藤 すでに小学生向け英語レッスンと学童保育で500名ほどの在学生がいます。学童保育は共稼ぎ社会を支えるためにとても有意義な事業であり、需要もあります。また英語の初期教育との親和性も高い。ここの在校生も着実に増やしていきたい、と思っています。

――Eラーニング、つまりインターネットによる地方販売はどうですか。

斉藤 きめ細かい最高の授業の品質というと、やはりクラスで優秀な講師から習うことでしょう。iPadを使うアプリもすでに生徒に提供していますが、それらはあくまでも補助教材と考えています。誠実によい英語教育を提供していくことが、当校の、そして私の使命だと思っています。地域的な展開については、慎重かつ真剣に研究しています。

――本日はありがとうございました。

斉藤 こちらこそ、ありがとうございました。

対談を終えて(山田の感想)

「斉藤代表のなかで、教育者と事業家・経営者の割合はどうなのか」と聞いたら、「創業時は教育者の要素が9割、今は4割でしょうか」と言う。「また教育者の割合を半分以上に戻したい」とも。新校舎に移り、しばらく教育者としての分野に集中が戻ることだろう。しかし、年に1000人ずつ在籍者が増えていくと、2年すると新校舎も満杯となる勘定だ。その時点で次の段階を実現する事業家としての手腕を再び発揮しなければならない。というか、今から次の飛躍に備えてもらいたい。

 斉藤代表は声が大きく、底抜けに明るい笑顔が特徴の経営者だ。J PREPのパンフレットには「目指すなら世界の頂点」とぬけぬけと書いてある。代表が生徒たちに向けているこの言葉を、そのまま代表に贈りたい。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)

●斉藤淳・J PREP 斉藤塾代表
研究者としての専門分野は日本政治、比較政治経済学。主著『自民党長期政権の政治経済学』により第54回日経経済図書文化賞(2011年)、第2回政策分析ネットワーク賞本賞(2012年)をそれぞれ受賞。J PREP では、全体の統括に加え、教材開発、授業、進路指導を担当。2014年に発売された『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』と『10歳から身につく問い、考え、表現する力』がベストセラーとなったほか、2015年度は、NHKラジオ『基礎英語2』で作文指導の連載も担当。新著に『ほんとうに頭が良くなる世界最高のこども英語』がある。
※ 本連載記事が『残念な経営者 誇れる経営者』(ぱる出版/山田修)として発売中です。

【山田修と対談する経営者の方を募集します】
本連載記事で山田修と対談して、業容や戦略、事業拡大の志を披露してくださる経営者の方を募集します。
・急成長している
・ユニークなビジネス・モデルである
・大きな志を抱いている
・創業時などでの困難を乗り越えて発展フェーズにある
などに該当する企業の経営者の方が対象です。
ご希望の向きは山田修( yamadao@eva.hi-ho.ne.jp )まで直接ご連絡ください。
選考させてもらいますのでご了承ください。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

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