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日野自動車、トヨタを見限りか…「親の」ライバル子会社と提携の掟破り

文=河村靖史/ジャーナリスト

トヨタグループ内での微妙な立場

 日野はこれまで、他社との連携ではトヨタが5.9%出資するいすず自動車【編注:「ず」の正式表記は踊り字】を軸に協業してきた。3月にはトラック・バスの自動運転で提携することで合意したばかり。それでもVWトラックとの新たな提携を決断したのは、トヨタに対する複雑な想いが背景にある。トヨタが子会社だったダイハツ工業を16年に完全子会社化したからだ。この時のダイハツの社長の三井正則氏はダイハツの生え抜き。

 ダイハツが完全子会社化されたことで、日野内には「次は日野か?」との空気が漂っていたが、生え抜きである下氏が17年6月に社長に就任。トヨタが日野を子会社化した01年以降、日野のプロパーが社長に就任するのは初めてで、ダイハツと同様、プロパー社長の会社を完全子会社化するとの観測は強まっていた。

 しかし、日野の場合、ダイハツとは様相が異なる。それは下氏とともに、トヨタの牟田弘文専務役員が副社長に就任したためだ。牟田氏は下氏より3歳上。牟田氏がトヨタの豊田章男社長が進めようとしていたカンパニー制の導入に強く反対したことから、日野に更迭されたとされている。豊田氏から疎まれた牟田氏の日野入りが意味するところは、トヨタグループとして日野の必要性が微妙になっている現われともみられる。

 また、トヨタは日野にディーゼルエンジン技術でのグループへの貢献を期待していたが、VWのディーゼル車不正事件の影響で、欧州でもディーゼル乗用車の需要は減少。トヨタは欧州市場などに投入しているディーゼルエンジン搭載モデルを段階的に縮小し、将来的には廃止する。

VWの前科

 トヨタを頼りにできないことを敏感に感じ取った下社長は、社長就任後すぐにアライアンスの模索に動く。国内商用車メーカーの三菱ふそうはダイムラーグループで、UDトラックスはボルボグループ。いすずは資本提携は解消したものの、現在も米ゼネラルモーターズ(GM)と業務提携しているほか、いすずとトヨタの関係がギクシャクしており、提携拡大は望めない。

 外資と組んでいない日野はVWトラックと「出会うべくして出会った」(下社長)ことで、「スピーディーに提携する話はまとまった」(VWトラックのアンドレアス・レンシュラーCEO
)としている。

 日野とVWトラックの具体的な提携内容の検討はこれから。両社は資本提携には踏み込まないと見られているものの、仮にトヨタが日野との関係を見直した場合、資本提携に発展する可能性も否定できない。ただ、VWグループは過去、資本提携していたスズキを子会社扱いしたことにスズキが激怒、提携解消になった「前科」がある。ドイツ自動車メーカーは提携相手を支配したい意向が強いといわれている。

「両社はお互いを対等なパートナーとして、信頼に基づく関係を構築できる」とVWトラックのレンシュラーCEOは言い切ったが、格下である日野を下に見ているのは確実。VWトラックはインドネシアなど、日野のアジアでの強いネットワークが提携の狙いと見られる。

 一方、日野はトヨタの庇護のもとから放り出される危機感から、トヨタも一目置くVWグループの商用車部門との提携に踏み切ろうとしている。互いの思惑のズレを乗り越えて「強いチームワーク」(レンシュラーCEO)を構築できるかは微妙だ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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