また、加藤綾子演じる治験コーディネーターの木下香織と渡海が会食するシーンではフランス料理を食べていたが、実際に私も医療関係者にフランス料理店や高級懐石料理に連れて行かれた経験がある。私の場合は付き添いの立場だったが、こういう医療業界の細かい「あるある」が織り込まれているのはうれしいところだ。

 ただ、演出的に残念だと感じたシーンが2つあった。まず、高階がオペ見学会場から抜け出し、実際のオペ室の外で勝手に見ているシチュエーションはあり得ない。多くの医師が佐伯のオペを見学しているといっても、外来や入院患者もいるなど病院自体は稼働しているはずだ。それにもかかわらず、オペ室以外に人がまったくいないし、そもそも外部の人間が侵入できる時点でセキュリティに問題がありすぎる。ここは高階が渡海に見つかり、渡海に「見学してけば?」といったセリフを言わせたほうがしっくりきたのではないだろうか。

 そして、もうひとつは輸血のシーンだ。「自分でも安全に手術できる」と予想していた高階が大量の輸血パックを用意しているはずがない。そして、輸血を行うには患者に適応するかどうかの検査が必要なため、すぐにはできない。渡海は高階がオペをする時点でそういったことを予想していたわけだから、「自分で輸血パックを発注しておいた」などと皮肉を言うシーンがあってもよかったはずだ。

 また、最大の懸念は渡海のキャラ設定だ。だるそうに登場して「邪魔だ」「死ね」と暴言を吐き、汗をかくほどの過酷なオペをするわけでもなく、ただ縫合だけをして帰っていく……。これでは、できない医師を汚いやり方で蹴落とすという点を除けば、単なる患者の命を助ける腕のいい医師にすぎない。いい奴なのか悪い奴なのかわからないような描写が続けば、今後の展開にもギャップが生まれず、結果的に視聴者をモヤモヤさせる原因になるだろう。

 とはいえ、最後に渡海が世良の肩につけた「血の手形」には驚いた。あれは二宮のアドリブだったそうだ。正直、「二宮の華奢な体と身長では、天才外科医は似合わないのでは」と思っていたのだが、緊迫するクライマックスシーンであのアドリブが出たことには脱帽する。これが、二宮が業界から演技力を高く評価されているゆえんだろう。その手形はホームページやポスターにも使われており、ドラマを象徴するアイコンとなっている。二宮が、これからどんな渡海を見せてくれるのか楽しみだ。
(文=絢友ヨシカ/ライター)

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