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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

半導体って何? まったく何も知らない人も、絶対にわかる解説をしてみよう

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 1980年代中頃、日本はDRAMの売上高シェアで世界の80%を占めていたが、その後、凋落し、現在は韓国のサムスン電子がシェア1位である。DRAMのすぐ近くには、プロセッサ(Central Processing Unit、CPUともいう)という半導体がある。プロセッサは、人間の脳で言えば「思考する」役割を担っている。人間がキーボードに入力し、そのデータをDRAMが記憶し、そのDRAMとプロセッサがデータをやり取りしながら、ワークを行う。その結果、ワードで文章を書いたり、エクセルで表をつくったり、パワーポイントで図を作成したりすることができるようになっている。

 このパソコン用のプロセッサでは、米インテルが世界の80%のシェアを占めている。しかし、スマホの登場によってPCが売れなくなり、スマホのプロセッサに参入でなかったインテルは、24年間1位の座に君臨していた世界半導体売上高ランキングで、サムスン電子に抜かれて2位に転落してしまった。

 このように、最近のPCには、プロセッサ、DRAM、NANDの3種類の半導体が搭載されている。

 そして世の中には、もう一種類、System-on-a-chip(SoC)と呼ばれる半導体がある。SOCとは、プロセッサやメモリをひとつにまとめ、その1チップだけで、あるひとつのシステムが動作するようにした半導体である。もっと簡単に言うと、「思考も記憶もする」半導体である。

 SOCにおいては、設計を専門に行うファブレスという半導体企業が多数存在し、ファブレスが設計したSOCを専門に製造するファンドリーという半導体企業が存在する。そのなかで特に、アップルのiPhone用のSOC(アプリケーション・プロセッサと呼んでいる)を独占的に製造している台湾のTSMCがファンドリーのチャンピオンである。

 以上が、理工系の大学生用の半導体の説明である。半導体関連企業での講演を行う際にも、概ねこれと同じ説明を行うことにしている。

(2)本当にまったく知らない人

 筆者は、半導体製造装置の部品をつくっているある会社のコンサルを務めている。その会社でのコンサル終了後、会食を行い、さらに2次会でスナックに行ったときのことである。筆者の両隣りにはホステスさんが座って水割りをつくりながら、「どんなお仕事をされているのですか?」と聞いてきた。

 よくある会話だが、これに正確に答えるとなると、「プロセッサやメモリなどの半導体をつくるためには10種類ほどの製造装置が必要で、一つひとつの製造装置は約3000点からの部品から構成されており、この会社はその部品のひとつをつくっていて、私はその部品の売れ行きが良くなるようにコンサルを行っている」ということになる。

 しかし、この説明では、相手にはまったく理解されないであろう。まず、半導体がわからないだろうし、それをつくるための製造装置というのもわからないだろうし、その部品になるともっとわからないに違いない。

 そこで、即興で、次のような説明を行った。

「皆さんはスマホを持ってますね? あなたはiPhoneですね。あなたはソニーのエクスぺリアですね。そのスマホの中には、3人のこびとが入っているのです(図2)。それは、“記憶するこびと”“考えるこびと”“大声で叫んで通信するこびと”の3人です。


 まず、皆さんのスマホにはたくさんの人の電話番号が記憶されているでしょう。それから、カメラで撮った写真もたくさん入っていますよね。それは、“記憶するこびと”がいるからスマホが覚えていてくれるんですよ。

 次に、皆さんはスマホで音楽を聞いたり、LINEをしたり、ネットショッピングをしたり、いろいろなアプリを使いますよね。そんなとき、“考えるこびと”が音楽ならここにつなぎ、LINEならここにつなぎ、というように、スマホの中で仕事をしているのです。

 最後に、電話をかけたり、メールを出したり、ネットにつなげて検索したりしますよね。そのときは、“通信するこびと”が活躍しています。人間には聞こえない大声で、他の人のスマホに『おーい、電話だぞー』と叫んでいるのです。

 このように、スマホの中には3人のこびとが入っているのですが、そのこびとをつくるための装置があるのです。その装置はたくさんの精密な部品からできていて、この会社はその部品のひとつをつくっている会社です。そして僕は、その部品が売れるようにと雇われたコンサルタントというわけです」

 以上の説明は非常に好評でした。そして帰り際には、「次は3人のこびとをどうやってつくっているか知りたーい!」と言われました。しかし、それは非常に難しい問題で、まだ妙案はありません(幸い、そのスナックに行く機会は、まだありません)。

(3)妻がPCやスマホを買う場合にプロセッサやメモリをどう選ぶかを説明するとき

 筆者の妻は、大手出版社の下請けとして、子供向け絵本の編集や校正の仕事をしている。出版業界は、WindowsではなくMacを使う文化があり、それゆえ、筆者の妻もデスクトップのMacを2台、ノートブックを1台、合計3台をフルに使って仕事をしている。

 昨年、妻はデスクトップのMacを買い替えることにしたのだが、何をどう選んだらよいか迷っていたため、いくつかのアドバイスをした。

 たとえば、iMacのプロセッサについては、「27インチモデルには最大4.2GHz、21.5インチモデルには最大3.6GHzの第7世代のインテルプロセッサを載せることができます」と書かれている。また、DRAMについては、「8GB(ギガバイト)から16GB、32GB、64GBへ増設可能」と書かれており、SSDは、「1TB(テラバイト)、2TB、3TB」などの選択肢がある。

 妻は、プロセッサ、DRAM、SSDの役割を知らないので(恐らく多くの人がそうであろうが)、それが「何GHz」「何GB」「何T」などと書かれていても、どう選んでいいかわからないのである。そして当然、DRAMやSSDは、その容量が大きいほど、PCの値段は高い。だからといって、そのスペックを下げると、大量の画像を扱う仕事だけに、効率が恐ろしく悪くなる可能性もある。

 そこで、次のような例え話をして、プロセッサ、DRAM、SSDを選択させた(というより筆者が“えいやっ”と選択した)。

「プロセッサは料理人だと思えばいい。3.6GHzとか、4.2GHzとかは、料理人のパフォーマンスのようなものだ。もっと簡単にいえば、料理する速度だと思えばいい」

 この説明により、「より重い画像データを、より速く処理したい」ことから、最大4.2GHzになるプロセッサが搭載されている27インチのタイプを選択することになった。

 次はDRAMやSSDについてである。

「料理人にとって、DRAMとは、まな板のようなものである。DRAMの容量が大きいほど、冷蔵庫にある食材をたくさん並べたり、より大きな食材を包丁で切ったりすることができる。そして冷蔵庫がSSDだと思えばいい。SSDの容量が大きいほど、たくさんの、しかも重たいデータを格納しておくことができる」


 この説明によって、DRAMは32GB、SSDは2Tを選択することになった。筆者のノートPCが2.6GHz、DRAMが8GB、SSDが256GBであることを考えると、相当なハイスペックであるが、扱う画像データ量が半端ではないので、この位は必要だろうと見立てて選定させた。

2年前から半導体メモリやSOCが爆発的に伸びている

 ここまで、理工学部の大学生用、まったく知らない人用、妻用に、筆者が半導体をどのように説明しているかを紹介した。相当苦労していることをご理解いただければと思う。また、「その説明は使えるな」と思われたら、ご利用ください。

 2016年以降、本格的にIoTが普及し始め、人類が生み出すデジタルデータが指数関数的に増大している。そのビッグデータを記憶するために、世界中でデータセンターの建設ラッシュとなっている。そのデータセンターには、大量のサーバーが設置され、そのサーバーにはこれまた大量のSSDが搭載されている。そのSSDの基幹部品が半導体メモリのNANDである。

 16年以降、NANDはつくってもつくっても足りない状態となった。また、サムスン電子、SK Hynix、マイクロンの3社に集約されてしまったDRAMは、この3社が“緩やかな談合”を行い、生産調整をした結果、価格が2倍以上に高騰した。

 そのため、半導体種類ごとの月毎売上高においては、メモリ市場がほぼ垂直に立ち上がっている(図4)。また、毎年世界で約15億台出荷されるようになったスマホ用プロセッサはSOCに分類されているが、この市場規模も飛躍的に増大している。


 一方、スマホの登場でPCが売れなくなってきたため、主としてPCに使用されるプロセッサの市場規模の伸びは低調だ。また、スマホにはカメラが内蔵されている。そのカメラにはCMOSイメージセンサというアナログ半導体が入っている。そのアナログ半導体の成長も、メモリやSOCに比べると大したことはない。

 つまり、現在はサーバーやスマホの中に搭載される“記憶するこびと”や、スマホの中の“考えるこびと”が大量につくられているのである。最後まで読んでくださった方なら、図4の意味が、よくわかっていただけるものと思うが、いかがであろう?

お知らせ

 今年も昨年に続いて、サイエンス&テクノロジー主催のセミナーで講演することになりました。”記憶するこびと“や”考えるこびと“をはじめ、そのこびとをつくる装置や材料の話など、半導体の活きのいい情報をてんこ盛りするつもりです。

 以下に、講演タイトル、日時、場所、ウエブサイトを示します。

『 今年はもっと激動の世界半導体業界
 メモリ市況変調と新配線材料に対するビジネスの羅針盤
 -半導体メモリ変調の震源地は中国-
-微細配線はCuに替わってCoが登場- 』

日程: 2018年7月12日(木) 10:30~16:30
場所: 東京・港区浜松町 ビジョンセンター浜松町 (参加者数で変更の可能性あり)
詳細: https://www.science-t.com/st/cont/id/28687
 
 昨年のセミナーの際、遠隔地の方から、「参加したいけれど、旅費の問題で、受講が困難」という意見を多数いただきましたので、今年は主催者と相談して、以下の工夫を行います。

1)セミナーはライブ配信するため、遠隔地でも、PCで受講が可能です。
2)遠隔地ではなくても、会社や自宅のPCで受講することができます。
3)PCで受講される方は、チャット機能によりリアルタイムで質問することができます。
4)アーカイヴ機能により、開催日以降も1週間は何度でも視聴できます。

 受講料は、「講師紹介割引」で半額になります。「講師紹介割引」を希望される読者の皆様は、私のHPを覗いてみてください(http://yunogami.net/)。HPのトップページに講演会の案内を掲載しています。そこから、「講師紹介割引」をダウンロードすることができます。多数の読者の皆様と会場やPCでお会いできることを楽しみにしております。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)

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