任侠山口組は今年の3月から、これまで月に一度行われていた定例会を、2カ月に一度に切り替えている。傘下組織の負担軽減などを目的とした改革だと思われるが、定例会が開かれない月は、代わって地域ごとにブロック会議が行われることになっている。そんななか、4月22日に東日本方面組織のブロック会議が開催された。
開催場所は、任侠山口組において武闘派として知られる四代目竹内組本部(長野県松本市)。竹内組は、六代目山口組分裂後、まだ神戸山口組傘下だった頃、長野県内で六代目山口組三代目弘道会野内組と激しく衝突し、一歩も引かなかったといわれる組織だ。その時、竹内組組長だったのが、任侠山口組・織田絆誠代表の腹心中の腹心で現在、同組若頭補佐を務める山健連合会・金澤成樹会長である。金澤会長が任侠山口組内で新たに発足した山健連合会会長に就任したため、竹内組は現在の四代目体制となったわけだ。
任侠山口組のなかでも重要なポジションといえる四代目竹内組本部で行われたブロック会議だが、閉会後、近くの河川敷で親睦を深める花見会が開かれたことが確認されている。捜査関係者によると、そこに集まった数はおよそ200人。
「長野自動車道の松本インターチェンジへ、他府県ナンバーの高級車両が続々と降りてきたのを確認している。なかには揃いの迷彩柄の服を着た人物らも20名くらいおり、なんらかの裏部隊ではないかと警戒にあたっていた」(捜査関係者)
花見が目的だといっても、これだけの人数が集まるとなれば、何かしらの弊害が起こることを危惧するのは当然だろう。地元関係者によれば、開催場所となった河川敷では捜査関係者が多数警戒にあたり、カメラを回す捜査員の姿もあったようだ。
「三代目竹内組体制の頃から、河川敷でバーベキューを行う時などには100人近く集まることはあったが、今回は比べものにならないほどの人数が集まり、緊張感が漂いました」(同)
200人すべてが組員というわけではないかもしれないが、東日本の任侠山口組の関係者が、松本にこれだけ集結したということは注目に値する。任侠山口組の実際の構成員数を過少に見る向きもあるが、いざとなれば、これだけの勢力を動かせるということが誇示されたわけだ。そして、その中心にいるのが、金澤会長の出身母体である竹内組である。
竹内組といえば、このブロック会議が開催される数日前、栃木県宇都宮市で不穏な空気が流れていた。
事の発端は、飲食店の客引きとのトラブル。その2日後に竹内組から複数の組員らが宇都宮市内に派遣されていることが、捜査関係者によって確認されたのだ。幸いにして抗争に発展するような事態にはなっていないが、六代目山口組分裂後、敵対勢力の侵入を妨害すべく、2台の車を路上に止め高速道路を封鎖するなど、過激な組織として知られる竹内組が動いただけに、一時、業界関係者の間でも緊張が走ったようだ。
神戸を拠点とする任侠山口組だが、関東・甲信越での動きも無視できない。さらに、4月28日には、関西でもブロック会議が開催されるとみられており、捜査関係者らも警戒を強めているようだ。
(文=沖田臥竜/作家)
●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新小説『忘れな草』が発売中。