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サッカー協会、ハリル解任はスポンサー意向優先か…W杯決勝進出より人気低下対策か

文=中村俊明/スポーツジャーナリスト

アディダスとキリンからの圧力

 特に監督解任に大きな影響を与えたのが、日本代表のスポンサーであるアディダスとキリンビバレッジからの“圧力”だったという。拍車をかけたのが、ウクライナ戦後、本大会に臨む代表メンバー発表日の延期が囁かれたことだ。当初は、ガーナとの親善試合翌日の5月31日を予定していたが、3月に行われた欧州遠征の結果を経て、発表が3~4日延期されると予測されていた。

「この代表メンバー発表延期の可能性が浮上したことは、致命的な引き金となりました。一般的には、たった数日程度の延期は大きな影響がないように感じるかもしれませんが、プロモーション側の視点で言えば、数日のズレは思いのほか大きいのです。加えて、今回は本当に誰が選ばれるか予測がつかなかったこともスポンサーには大きな不安要因でした。

 つまり、23人のメンバーが決まらないとプロモーションができないわけですが、その決定が引き延ばされるかもしれないとの情報を受けて、ただでさえ結果が出ていなかった代表に不満を募らせていたスポンサーは、爆発してしまったのです。特にアディダスは、過去に例を見ないほど協会に詰め寄り、香川真司や本田圭佑といった人気メンバーを代表に呼ぼうとしなかったハリルホジッチ氏の解任につながったと聞いています。また、香川をはじめとしてアディダスがスパイクを提供している人気選手が、ことごとく代表に呼ばれなくなったことも同社が焦る一因といわれています。

 スポーツ界では、スポンサーサイドが選手選考に口を挟むことは珍しいことではありませんが、今回は協会がスポンサーサイドの要望に折れ、プレイヤーやコアなサッカーファンを見切ったといえます」(同)

 また、関係者の間では、すでに協会にあきらめムードが漂っていたと指摘する声もある。「ワールドカップで勝てる可能性をわずかでも上げるため」という監督交代の理由には、現場レベルでも不信感が出ているのだ。つまり協会側は、今回のワールドカップではグループリーグを突破できる可能性は極めて低いと考えており、話題づくりや人気獲得を目的として監督を交代させたとの見方があるのだ。いわば、ハリルホジッチ氏は協会の犠牲にされたといえる。

 頑ななハリルホジッチ氏の性格も、解任劇を助長したという。

「選手のなかには、戦術面など監督に対する不満をメディアに漏らす人が数人いました。ハリルホジッチ氏は『話し合いの場を設ける』と言いながら、選手が実際に意見をぶつけると、その後、冷遇されるという選手が出ました。

 ハリルホジッチ氏は頑固な性格で、自分を曲げない人だったことに加え、選手たちもそうしたトップダウンの管理サッカーに反発したのです。さらに言えば、中心選手が決まらず、選手と間を取り持つ役割をできるのが長谷部しかいませんでした。その長谷部も、最近はケガで代表を外れることが多く、チームのムードは下がる一方でした」(協会関係者)

 試合に勝てないばかりか試合内容も面白みがなくなり、代表人気は下がり続けた。その上、香川や本田といった人気選手も代表に呼ばれなくなり、ワールドカップが直前に迫っても国民の関心は一向に高まる気配を見せない。業を煮やしたスポンサーサイドからは、人気選手の代表復活を求める声も強まっていった。そこで、協会は大鉈を振るったのだ。

「監督解任という手法は、これ以上ない劇薬ではあります。結果的にテレビのワイドショーでも連日、日本代表に関する報道が相次ぎました。それに今回の解任で、本田や香川といった人気選手の本大会選考の可能性は極めて高くなりました。結果的に、大会への関心を強めるという点については、協会側の思惑通りになったわけです。もっとも、本大会で結果を残せる可能性は著しく低下したという点に目をつむればですが」(前出・代表番記者)

 監督解任という急場しのぎの舵取りは、吉と出るのか、凶と出るのか――。6月のワールドカップ開幕を待たずして、さまざまな軋轢が生まれているという事実を、協会側はどうとらえているのだろうか。今、日本サッカー界は岐路に立たされている。
(文=中村俊明/スポーツジャーナリスト) 

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