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林晋哉「目からウロコの歯の話」

深刻化する子どもの視力低下、原因は噛む力の低下?ごはんを「硬い食べ物」と言う子どもたち

文=林晋哉/歯科医師
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深刻な咬合力低下が視力低下を招く

 ヒトは、生まれた時は目がほとんど見えませんが、成長に伴い徐々に見えるようになります。視力はカメラのレンズに相当する水晶体を、毛様体筋という筋肉が働いて調整することでピントが合い、くっきり見えます。この毛様体筋を単独で鍛えることは難しく、目に隣接するさまざまな筋肉を使うことで連動して鍛えられると考えられています。特に、食べ物を噛む時に働く咀嚼筋(咬筋、側頭筋など)は、隣接する筋肉のなかでは一番大きな筋肉なので、その影響は大きいと考えられます。

 また、目の網膜には、魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸のDHAが多く存在し、その機能を支えていますが、子どもたちやその親世代の魚離れによるDHA不足も視力低下に影響を与えています。

 こうしたことを裏付けるように、子どもの好きな食べ物と挙がるのは、カレー、ハンバーガー、フライドポテト、ヨーグルト、プリンなどで、魚類が少なく、いずれもよく噛まなくても飲み込める柔らかいものばかりです。

 最近では、ごはんを「硬い食べ物」、豆腐を「普通の硬さ」と答える子どもがいるなど、咬合力低下は深刻さを増しています。さらに、こうした硬さの感覚低下も視力低下とリンクしています。また、乳幼児の早すぎる時期の離乳も、食べものを噛まずに飲み込むことを覚えてしまうので、その後の咬合力低下につながり、ひいては視力低下に結びつきます。

 日本人はメガネやコンタクトレンズを使う人が多いので、視力低下の低年齢化を気にしない風潮がありますが、動物として考えた場合、視力低下は生死にかかわる大問題です。視力は、食べ物を見つけ、外敵を察知し、敵と味方を見分け、仲間とのコミュニケーションツールとして不可欠で重要な能力です。それが、幼いうちから裸眼で自分の足元も覚束ない人の割合が大きいことは、かなり危機的な状況といえます。視力低下の低年齢化を軽く見てはいけないのです。

 視力低下の対策として、テレビゲームやスマホなど目を酷使すること避けるなど、目を保護することばかりに主眼を置きがちですが、視力調節を担う毛様体筋を鍛えるのは、咀嚼筋であることを再認識し、幼いときからよく噛む食習慣を身につけるよう取り組む必要があるのです。

 よく噛む習慣を身につける方法として、母乳育児やガムの利用などの具体策を、本連載記事『日本人の「噛む力」の弱まり、深刻な健康被害の恐れ…IQ低下や認知症リスク増大』にも記しております。よく噛む生活習慣に切り替え、視力低下を防ぐ一助としていただきたいと思います。
(文=林晋哉/歯科医師)

参考資料
『縦断的にみた視力低下の現状とその要因』(島田章夫)

●林 晋哉(歯科医師)
1962年東京生まれ、88年日本大学歯学部卒業、勤務医を経て94年林歯科を開業(歯科医療研究センターを併設)、2014年千代田区平河町に診療所を移転。「自分が受けたい歯科治療」を追求し実践しています。著書は『いい歯医者 悪い歯医者』(講談社+α文庫)、『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』(祥伝社)、『歯医者の言いなりになるな! 正しい歯科治療とインプラントの危険性』(新書判) 、『歯科医は今日も、やりたい放題』(三五館)など多数。近著は『入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」: -あなたもいつか歯を失う』(パブフル)。

林歯科HP:http://www.exajp.com/hayashi/

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