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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

フェイクニュース規制は、フェイクニュース以上に危険だ…政府は国民の言論統制に利用

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 これではイラク戦争当時、ブッシュ大統領ら米政府要人が繰り返した「イラクは大量破壊兵器を保有している」という主張は偽ニュースに該当しないことになる。政府要人はたいてい「報道価値のある個人」だからだ。

 一方でフェイクニュース・チャレンジは、報道価値のある個人について無名のメディアが金銭や政治目的で嘘の主張をした場合、偽ニュースとみなす。これでは政府が国民を欺こうと嘘の主張をした際、それを批判する独立系のニュースサイトなどのほうが偽ニュースと判定されかねない。ニュースサイトはなんらかの収入なしには持続が難しいし、政府への批判は政治的な声明の一種とみなされるからだ。

少数派の言論を封殺

 フェイクニュース・チャレンジは一例にすぎない。だが、もし同じく政府要人の発言や主流メディアの報道を基準にニュースの真偽を判断する手法が広がり、それによって偽ニュースと断じられたものがSNSから排除されることになれば、少数派の言論は事実上、封じられてしまう。

 最近アジアで、偽ニュースを法的に取り締まろうとする動きが出てきた。インドでは政府機関への取材に欠かせない記者証を偽ニュースを流した新聞やテレビの記者には発給しないとの政策を政府が打ち出した。マレーシアでは偽ニュースの発信者に最高50万リンギ(約1400万円)の罰金や6年以下の禁錮刑を科す対策法を議会が可決した。

 米欧や日本の主流メディアはアジアのこうした動きに批判的だ。しかし自国政府が自分に都合のいい情報を広めるため、反対意見を偽ニュースと決めつけたとき、主流メディアがそれをきちんと批判できるかどうか、心もとない。今現在も「イギリスで元スパイのロシア人男性とその娘を神経剤で襲撃したのはロシア」「シリアのアサド政権が化学兵器を使用した」といった真偽の疑わしい政府の主張をおうむ返しするばかりなのだから。

 ロシア革命で社会主義国・ソ連を築いたレーニンは、言論・報道の自由をこう批判したとされる。

「なぜ言論・報道の自由を認めなければならないのか。なぜ政府自身への批判を認めなければならないのか。凶器による反対は許さない。思想は銃よりはるかに危険だ。なぜ政府を困らせるために考えられた、悪質な意見の普及を許さなければならないのか」

 言論・報道の自由を恐れる権力者の本音が正直に語られている。

 一方、アメリカ建国の父の一人で、第3代大統領を務めたトーマス・ジェファソンは言論・報道の自由を強く擁護し「新聞のない政府と政府のない新聞。私は躊躇せずに後者を望む」と述べた。

 ジェファソンの新聞擁護は、今の大手メディアの堕落にうんざりしている人には甘やかしすぎだと感じられるかもしれない。しかし大手メディアがふがいないからといって、報道の自由まで失っていいわけではない。政府に対峙するまっとうなメディアが育つためには、今以上に言論の自由が欠かせない。安易な偽ニュース規制論に同調しないようにしたい。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

<参考記事・サイト>
「偽ニュース、AIで対抗」フェイスブック開発責任者:日本経済新聞
Fake News Challenge
In Europe’s Election Season, Tech Vies to Fight Fake News – The New York Times

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