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東京・杉並区、待機児童ゼロを達成できた理由…今年度も保育所定員1千人増へ

文=小川裕夫/フリーランスライター
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東京・杉並区、待機児童ゼロを達成できた理由…今年度も保育所定員1千人増への画像1杉並区・和田堀公園(「Wikipedia」より/Aoisora77)

 人口減少社会に突入し、日本各地では少子高齢化が深刻化している。そんな地方都市を尻目に、東京23区は人口増加を続ける。東京の人口が増加しているのは、毎年4月に地方から多くの若者が進学や就職のために上京するからだ。そうした背景が、東京一極集中につながっている。

 人口増加によって、東京23区を悩ませる問題がいくつかある。なかでも喫緊の課題とされるのが、待機児童の解消だ。子供を預けたいと希望する父母が増える一方、これまで行政の対応は後手に回っていた。保育所の整備が追いつかず、待機児童問題が深刻化・慢性化しているが、その問題を解消する動きが行政で活発になっている。

 千代田区は認可保育所に偏在する保育需要を分散し、認証保育所にニーズを誘導する認証単願補助制度を導入。江戸川区は保育所と同様に不足しがちな保育士の処遇を改善。新卒の保育士を積極的に採用するとともに、結婚や出産を機に退職してしまった保育士の職場復帰を促す。保育士の確保に取り組むことで、保育所の新設や既存保育所の定員増を狙う。荒川区は国家戦略特区を活用。保育所を整備する土地を見つけることは難しくなっているなか、公園という公共スペースを活用することで保育所の開設をスムーズにした。

 一方、企業も企業内保育所を開設する動きを活発化させている。千代田区では三菱地所が、大田区ではANAが企業内保育所を開設した。また、ヤフーも2018年度に企業内保育所を開設すると発表した。

 これら民間の取り組みも待機児童解消の一助になるが、企業内保育所はあくまでもその企業、もしくは関連企業に勤務する人しか利用できない。待機児童を抜本的に解決するには、行政が率先して取り組むしかない。

「すぎなみ保育緊急事態宣言」

 杉並区は、数年前まで深刻な待機児童問題を抱えていた自治体のひとつだ。13年に区内在住の若いママたちが区役所前で抗議集会を実施し、「ママの乱」とも呼ばれた。

 杉並区は、ほかの区と比べて保育所の整備が遅れていたわけではない。10年から16年の間に保育所を19も新たに開設。定員枠も2100人以上も増やしている。急ピッチで保育所整備を進めているものの、それを上回るスピードで保育需要は増加を続けた。このままのペースで保育需要が増え続けると、区内だけで500人以上もの待機児童が発生する――。そんな予測が出始めた16年、杉並区は「すぎなみ保育緊急事態宣言」を発令する。杉並区保健福祉部保育課の担当者はこう話す。

「杉並区は決して保育所整備に手を抜いていたわけではありません。実際、保育関連事業の予算は10年度に約63億5000万円でしたが、16年度は約135億6000万円まで増額しています。それでも、高まる保育需要に追いつかなかったのです」

 杉並区は駅前こそ商業施設が集積しているが、そのほかは住宅街が広がる。これらの住宅街では細分化された土地も多く、保育所を開設できるようなまとまった空き地もない。だから、大規模な保育所を開設することは難しかった。また、住宅街が全区域に広がっていることもあって、各地域で保育ニーズがあった。大きな保育所を開設するより、各所に小さな保育所をいくつもつくらなければならなかった。

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