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ソフトバンクの挫折…米携帯電話市場進出が失敗、スプリントで巨額有利子負債抱える

文=編集部
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スプリント買収は失敗だった

 ここで、これまでの経緯を振り返っておきたい。

 ソフトバンクGは13年に約2兆円で米携帯電話業界3位(当時)のスプリントを買収。同4位のTモバイルUSとの合併に乗り出したが、米連邦通信委員会(FCC)が健全な競争を阻害するとして難色を示し、14年8月に頓挫した。

 株式市場では、今回も当局が合併を認めない可能性が高いとみて、TモバイルUSとスプリントとも売られたわけだ。

 ソフトバンクGがスプリントをドイツテレコムに売却することについて兜町の関係者は、「“カネ喰い虫”のスプリントからようやく解放された」との共通認識を持っている。

 統合が実現すれば、スプリントは20年3月期からソフトバンクGの連結対象から外れる。そうすれば、「(ソフトバンクGの)バランスシート上の負債が大きく減少する。スプリント株式の評価益の計上に伴い株主資本が改善する可能性もある」と分析する。

 新TモバイルUSは企業規模拡大で次世代通信規格「5G」の商用化に向けた巨額投資に乗り出せるようになり、競争力が向上といった前向きの評価もある。

 その一方で、「5G」への莫大な投資に耐えられなくなったソフトバンクGが、米携帯事業から実質的に撤退するといった辛口の見方もある。新会社は、通信速度が現行の100倍となる「5G」対応などに、3年間で400億ドル(4兆3000億円)を投資する。

 ソフトバンクGが鳴り物入りで買収したスプリントは業績悪化が続いた。米国内シェアは、3位の座をTモバイルUSに奪われ、スプリントは4位に転落した。

 ソフトバンクGにとってスプリントはお荷物でしかなかった。ソフトバンクGの17年12月31日時点の有利子負債は15兆8049億円。このうちスプリントは4兆1364億円で、連結全体の26.2%を占める。スプリントは利払い費が年2700億円に上り、最終赤字が続く原因となった。

 米トランプ政権は公約に基づき法人税率を35%から21%に引き下げた。スプリントは17年10~12月期の第3四半期決算で最終損益が71億6200万ドルの黒字(前年同期は4億7900万ドルの赤字)に転換した。続く18年1~3月期の最終損益も6900万ドルの黒字(前年同期は2億8300万ドルの赤字)。

 トランプ効果で、スプリントはソフトバンクGが買収後初めて、18年3月期(本決算)で73億8900万ドルの最終黒字となり、ドイツテレコムに、有利に売却する好機を迎えた。通期で黒字を確保するのは実に11年ぶりのことだ。

 ソフトバンクGはスプリントに出資しているだけではない。スプリントが抱える4兆円の有利子負債のうちソフトバンクGが融資したものや借り入れの保証をした分もある。

 はっきりしたことは、ソフトバンクGのスプリントの買収は、結局、失敗だったということだ。ソフトバンクGは、スプリントの“くびき”から本当に解き放たれるのだろうか。米規制当局の審査が最大の関門だ。そのハードルは決して低くない。
(文=編集部)

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