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変化に振り回される楽天、社会に変化を起こすアマゾン

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 一方、楽天が目指しているといわれるアマゾンは、自社のネットワークシステム上に、個人から企業まで、さまざまな経済主体を取り込んでいる。大くくりに言うと、流通、金融など、具体的な事業ではなく、社会に必要な経済活動をネットワーク上で実現してきた。それによって、消費などに関するデータを集め、分析することによって新しいサービスを提供して、付加価値を生み出している。消費者の行動を変化させる触媒=カタリストの役割を担っているといってもよい。フェイスブックのように、データを販売するビジネスモデルとは根本的に異なる。

 言い換えれば、アマゾンが目指すものは、ネット空間と実社会の接続だ。ネット上でモノを買うことはできるが、それを使うためには品物が指示された場所に届けられなければならない。アマゾンは、ネットワークテクノロジーを用いて、売買などの契約から物流までをシームレスにつなごうとしている。

携帯電話事業の“常識”に挑む楽天

 アマゾンを目指す楽天にとって、総務省から条件付きで携帯電話事業者の認可を得たことは、今後の経営戦略にとってのターニングポイントになる可能性がある。これまでの買収などを見ていると、ある意味で楽天は変化に振り回されてきたといえる。今後は、ネットワークの整備とともに、アマゾンのように変化を起こす主体となれるか否かが問われる。

 楽天が目指しているのは、ネットワークテクノロジーの威力を発揮し、政府、業界全体に浸透してきた常識とは異なる、新しい発想を社会に持ち込むことだろう。それによって、楽天はサービスを全国に浸透させ、自社のネットワークにより多くの個人や企業を取り込みたいはずだ。

 総務省を筆頭に、わが国の通信インフラの発想は、通信網を敷設し、それをメンテナンスしていかなければならないという考えに基づいている。一方、世界全体でみると、この発想とは異なるアプローチが進んできた。たとえば、サブサハラ地域のアフリカ各国では、固定通信網を整備することは、もはや重視されていない。アンテナ基地を設置することによって通信インフラが整備され、人々がモバイル通信サービスを利用している。楽天の発想には、こうした取り組みに共通する部分がある。

 興味深いのは、通信インフラの発展とともに、金融面にも革新が現れたことだ。ケニアではM-PESA(エムペサ、Mはモバイル、PESAはスワヒリ語でお金)と呼ばれる、フィンテックビジネスが浸透している。つまり、携帯電話の普及によって金融へのアクセシビリティが向上し、経済発展のスピードが加速化している。

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