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武神健之「優良健康文化をつくるために」

山口達也さん事件報道で触れられない「お酒の本当の怖さ」…依存度チェックリスト

文=武神健之/医師、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事
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アルコールのマイナス面

 アルコールのプラス面として、職場の堅苦しさから場を変えてリラックスできる、コミュニケーションを助けるということを多くの人は経験上知っています。

 では、アルコールにはどのようなマイナス面があるのでしょうか。以下にあげる4つは、代表的なものですが、本人が気づかない(気づきにくい)うちにたび重なり、気づいたときにはもう遅かったというのが多くの場合の経過です。

1.致酔性:意識状態の変容をきたし、事件や(交通)事故、急性アルコール中毒の原因となりえます。

2.慢性影響による臓器障害:肝機能障害だけでなく、メタボリックシンドロームを助長したり、その先は脳卒中やがんのリスク要因ともなります。

3.依存性:長期にわたる多量飲酒により、精神的にも身体的にも健康障害がでるだけはなく、社会に対する適応力が低下したり、職場や家族等周囲にも悪影響が出ます。

4.違法行為:未成年者の飲酒は禁止されている(未成年者飲酒禁止法)ので、未成年の飲酒は、飲んだ人も飲ませた人も、法律を犯すことになります。

日本人のアルコール依存への認識は生ぬるい(?)

 日本では「アルコール健康障害対策基本法」が平成 26 年6月に施行、平成 28 年5月に「アルコール健康障害対策推進基本計画」が策定されました。社会として、会社としても社員のアルコールによる健康障害対策について対処することが求められているといえます。

 そのようななか、運送業等ではアルコール教育、アルコールパッチテスト、アルコールチェッカー等の導入が進んできていますが、アルコールに関するものはタバコと同じで、まだまだ個人の嗜好品との扱いであることが現状だと思います。

 しかし、世界レベルでみるとアルコール依存症は、多くの日本人の認識より深刻なものなのです。実際に、国際疾患分類(ICD-10)において、アルコール依存症は、アヘン・大麻・コカイン等と同じ「精神作用物質使用による精神及び行動の障害」に分類されています。メンタルヘルス不調としてよく名前をきくうつ病気(「気分障害」に分類)や、適応障害(「神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害」に分類)とは異なるのです。

アルコール依存症の治療は完全断酒のみ

 アルコール依存症の唯一の治療法は断酒であり、節酒ではありません。状況により治療方法はさまざまで、離脱・断酒、酒害教育、抗酒剤などの薬物療法、心理社会的治療(カウンセリング)などがありますが、一番大切なのは、本人の意思といえるでしょう。

 早期発見、早期治療から治療継続において、周囲のサポートも大切ですが、本人の決意と自助努力に大きく左右される点は、麻薬等の中毒症のそれと非常に似ています。

 お酒=アルコールの問題を、ゴシップだけで終わるのではなく、深刻なリスクとして、ぜひ多くの働く人に知ってほしいと願ってやまない今日この頃です。
(文=武神健之/医師、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事)

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