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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

20代が陥る「転職・負のスパイラル」…勘違いする新卒社員たち

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季

 もちろん、30歳前後まで同じ職場で働き、十分に実績を重ねたうえでキャリアアップを目指す“ポジティブ転職”もある。だが、新卒数年で会社を辞めてしまう人は、こういった“ネガティブ転職”が圧倒的に多いだろう。それが“負のスパイラル”の入口なのだと有馬氏は話す。

「入社した会社に嫌気がさしてしまう理由に『面白い仕事をさせてもらえない』というものがあると思いますが、本人の適性や能力を上司が判断する材料を集めるためには、本人の好きな業務だけをさせているわけにはいきません。上司は、与えられた仕事に興味を持って創意工夫をしようとする姿勢が見たいのです。日常の業務のなかで、言われた仕事を言われたとおりにするだけではなく、自身の熱意でプラスアルファを提供しようと努力する社員に対して、上司はより高度な仕事を与えようと考えるものです」(同)

早期退社は購入した商品を開けないようなもの

 それができるようになるためには、会社や取引先の特徴、文化、業界の競争、市場の特徴などについての理解は必須で、それなりに会社に籍を置いて一定期間同じ場所で働く必要がある。なかには、新入社員のなかでも要領よく仕事をこなし、すぐに上司の信頼を勝ち得る人もいるかもしれないが、普通はそう簡単にはいかない。

「入口しか知らずにほかの会社に目移りして転職活動をするということは、商品の包装を開けただけで、中身を見たり使ったりしないで買い替えてしまうようなものです。どのくらい在籍すれば会社や業界の全容がわかるかは業種によってそれぞれなので一概には言えませんが、やはり最低3年程度は体験してみないと転職活動時にアピールできるだけの知識や実績は得られないのではないでしょうか」(同)

 当初は会社に貢献しない新人を、企業が雇用して育てるだけでも多大なコストが必要だ。まして中途採用であれば、即戦力を求めるのは当然のことであろう。そのような採用側の心理を想像しないで向こう見ずに退職してしまっては、自分にも、新卒で入った会社にも、転職先にもネガティブな意味での転職となってしまう。

「近年は“売り手市場”なので、自分を過信してしまいがちな社会背景がありますが、誰でも最初は花形の仕事を任せてはもらえませんし、どのような職場でもストレスは発生するものです。それを乗り越えるバイタリティを持たなくては転職活動でもうまくはいきません。“ネガティブ転職”ではなく“ポジティブ転職”で夢に近づいてください」(同)

 自分にはもっとふさわしい仕事が何処かにある――。その考えこそが甘えであることを、退職する前に一度思い起こすべきだろう。“第二新卒”枠に過大な期待をするのではなく、自分自身を冷静に見つめて実りあるキャリアデザインを計画した方が良さそうだ。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

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