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「採用できない罪状」も記載…犯罪歴ある人向け求人誌「Chance!!」創刊で社会変革

文=横山渉/ジャーナリスト
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 満期で出所しても家族から「顔を見せるな」と拒絶されて身寄りがない人や、所持金が尽きたために盗みを犯して刑務所に戻ってしまう人など、そんな事例はたくさんあるという。三宅氏は親から見捨てられた未成年を養子にしようとしたこともある。

「2015年4月、ボランティアをしていたときに知り合った17歳の女の子から手紙が届きました。彼女は非行を繰り返し、両親がいるにもかかわらず長年施設で過ごし、腕にはリストカットの跡がありました。手紙の内容は日常の些細なことでしたが、私は彼女が出院後に身元引受人になって一緒に生活することを決めました。しかし、今の法律では、まったくの他人が未成年者の身元引受人になるのは難しいとのことだったので、養子縁組しようということになりました」

 三宅氏が会社を立ち上げた直接の動機は、その少女や彼女と同じような境遇の人たちの居場所をつくりたいということだった。しかし、彼女は東京での生活を始めて間もなくSNSで知り合った地方の少年と付き合うようになり、彼の家に入り浸るようになった。紹介した仕事も含め、バイトを休みがちなため当然仕事は長続きせず、三宅氏にとって難しい現実を突きつけられる出来事となった。

次号は掲載企業30社を目指す

「Chance!!」は求人誌なので収益源は出稿企業からの掲載料だが、受け入れてくれるならどんな会社でも良いというわけではない。媒体趣旨を理解する企業を探すのは、知り合いの紹介が多いという。

「実際に社長と会ってみて、『どんな人でも一緒に成長したい』という思いがあって、万が一逮捕されることがあっても待ってくれる会社を選んでいます。『とにかく人手が欲しい』というだけの会社はお断りしています」(三宅氏)

 創刊号に掲載していない企業も含め、協力企業は30社以上あり、理解は少しずつ広がっているという。創刊号の配布先は刑務所や少年院、更正保護施設、受刑者支援団体などで約650部。発刊から1カ月が経過した時点で、雑誌を通じて連絡があったのは4人、うち採用に至った1人は就労5日目で退職、面接が決まっているのが2人だ。この求人誌が収益事業として独り立ちしていくには、まだまだ時間がかかりそうだが、三宅氏は「社会貢献やボランティアというつもりはまったくない」と強調する。会社設立のときも、NPOではなく株式会社にした。

 出所・出院した人たちが社会復帰するには、社会の温かいまなざしは不可欠だ。しかし、ボランティアという言葉には、ともすると“同情”や“憐れみ”の響きが伴う。出所・出院した人たちが本当の意味で自立していくには、求人誌が収益事業として成立するように社会から求められる存在になってほしいと、三宅氏はそう願っているようだ。
(文=横山渉/ジャーナリスト)

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