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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

北朝鮮と中国が共同戦線構築、米国と冷戦勃発か…米朝首脳会談キャンセルの可能性も

文=相馬勝/ジャーナリスト
北朝鮮と中国が共同戦線構築、米国と冷戦勃発か…米朝首脳会談キャンセルの可能性もの画像1提供:KCNA/UPI/アフロ

 習近平中国国家主席は今月7、8日、大連で、電撃訪中した北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長と北朝鮮の非核化の手順や方法について集中的に話し合い、短期間での非核化を目指すトランプ米大統領の考え方と違いがあることを認めたうえで、「6月の米朝首脳会談で良い結果が出なくても、話し合いを続けていけば、わが国の貴国への支援は変わることはない」と言明していたことがわかった。

 その後、北朝鮮側から「米朝首脳会談の再考」(金桂冠第1外務次官)や「情勢の白紙化」(外務省報道官)といった発言が相次いでいることから、これは中国の支援を配慮に入れた対米揺さぶり戦略とみられる。
 
 金氏は習氏との会談で、米朝首脳会談の最重要テーマである非核化について「トランプ米大統領は違う考えを持っているようだが、われわれは段階的に進めていくつもりだ」と明らかにした。これに対して、習氏は「中国は段階的、同時並行的な原則に従って問題を解決するプロセスを主張している」と応じて金氏の考えを支持。さらに、習氏は「相違点が出てくれば、その都度話し合えばよい」と述べて、柔軟な姿勢を強調したという。

 この中朝首脳会談について、朝鮮中央通信は「重大な事業に関する誠意が込められた(習氏の)意見に対して、(金氏が)感謝の意を表明した」と伝えるとともに、「両国の戦術的な共同作業を一層積極的かつ緻密に推進していくための方法について協議した」とも述べて、今後も両国の「緊密な協力関係の強化継続」を確認した。

 その後、北朝鮮は米韓合同軍事演習を理由に南北高官級会談をドタキャンし、米朝首脳会談の中止の可能性にも言及するなど強気の姿勢が目立っている。これについて、トランプ米大統領は「(習氏が金氏に)影響を及ぼしている可能性がある」と指摘し、貿易摩擦問題をめぐる米中協議で中国側から、なんらかのサインがあったことを示唆している。
 
 北京の外交筋は「中国は米国との貿易摩擦問題の協議で劣勢に立たされており、北朝鮮問題を盾にして、米国側から妥協を引き出そうという戦略ではないか。北朝鮮も中国と共同戦線を張り、米国を揺さぶっているとも見て取れよう」と指摘している。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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