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ケースで見る!「働くハイスペック女子」への処方箋

不妊治療ストレスで休職に陥った外資系勤務キャリア女子…同僚が次々出産でさらに多忙に

文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表

 流産から半年たった頃、主治医から不妊治療を提案されましたが、もう少し自分の力でなんとかしたいという思いもあり、漢方薬や鍼治療を始めています。仕事のほうはというと相変わらず忙しく、平日は残業が深夜にまで及ぶことが多く、ヘトヘトな毎日です。その一方で、会社の同僚は出産ラッシュ。産休に入る予定でお腹が大きい人やすでに育休中の人など、時短勤務をしている人も結構います。子供のいないMさんにそのしわ寄せがきて、以前にも増して仕事が忙しくなっているように感じます。

 数カ月後、彼女は人工授精をやってみることにしました。高額で体への負担も大きい治療のために全力を尽くしたいとは思うものの、相変わらず仕事は忙しく、こんなにストレスがかかっていて、いい卵子が取れるのか不安でした。残念ながら結局のところ、採取できた卵子のグレードは低く、人工授精は失敗に終わってしまいました。もう一度挑戦したいと思うものの、お金もかかるし、今のように仕事が忙しいといい卵子が取れない気がする。キャリアのためにはいっそうがんばらないといけないけれど、子供はどうしても欲しい。周囲の女子は子育てを理由に負荷を下げてもらっているのに、「働くママになりたくてもなれない自分」が代わりにやっていることへの虚しさと、なぜ自分だけ子供が持てないのかという惨めな気持ち。そんな思いがかけめぐって、眠れない日が続くようになりました。

 産業医面談を受けに来たMさんとの話で明らかになったのは、仕事自体には不満や問題がまったくないということでした。仕事が終わって夜になると、自分だけがなぜ妊娠できないのかという思いがつのり、悲しくなって眠れない。同僚が子供の写真を見せ合って、さらには子供を理由に早退するのに、彼女たちの仕事を自分が代わりにやらなければならないときに情けない気持ちでいっぱいになると言うのです。Mさんは、私の勧めでメンタルクリニックを受診しましたが、妊娠希望があるため服薬はしませんでした。不眠症状は続き、ついには出社困難となって休職せざるを得ない状態になってしまいました。

不妊治療とそれ以外の生活とのバランスが鍵

 このケースに関して、また同様のケース一般について、対処が難しい点は主に3つあります。

1.先行きが見えない不妊治療への不安があること。
2.不妊治療中の社員への周囲の理解不足があること。
3.不妊治療とメンタル不調に関する服薬治療の両立が困難であること。

矢島新子/産業医

矢島新子/産業医

矢島新子
山野美容芸術短期大学客員教授。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。パリ第1大学大学院医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、保健所勤務などを経て産業医事務所設立。10年にわたる東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの女性外来、産業医として数千人の社員面談の経験より、働く女性のメンタルヘルスに詳しい。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)ほか。
株式会社ドクターズヘルスケア

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