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日大・内田前監督、「名監督」「次期理事長」の名誉欲しさに反則指示か…アメフト関係者語る

文=伊藤遥雄/ライター
日大・内田前監督、「名監督」「次期理事長」の名誉欲しさに反則指示か…アメフト関係者語るの画像1記者会見を行う日本大学アメリカンフットボール部の内田正人前監督(写真:日刊現代/アフロ)

 依然として収束する気配が見えない日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題において、もっともはっきりしない点はなんだろうか。それは、練習を積み重ねて昨年の甲子園ボウル(全日本大学アメリカンフットボール選手権大会の決勝戦)で関西学院大学を破って栄光をつかんだ日大が、なぜ今年は相手の選手をつぶすようなアンフェアな手段を選んだのかということだ。

 日大アメフト部の「フェニックス」は、徹底したスパルタ練習で選手を鍛え上げた故・篠竹幹夫監督時代の1960~80年代に黄金期を迎えるなど、大学アメフト界きっての名門チームであった。しかし、90年の甲子園ボウル優勝を最後に低迷したのは、批判を浴びた「スパルタ練習が時代にそぐわない」という事情も一因とされる。

 2003年に篠竹監督が定年退職した後、コーチだった内田正人氏が監督に就任する。内田政権において長らく全国制覇には手が届かなかったが、昨年、関学大を倒して27年ぶりに甲子園ボウル優勝を果たした。昨年はフェアプレーで悲願の大学日本一になったのに、なぜ今年は暴挙に及んだのか。

連覇のためには手段を選ばなかった内田前監督

「昨年は徹底的なスパルタ練習を行い成功しましたが、おそらく『今年はそれだけでは勝てない』という思いがあったのだと思います」と語るのは、某大学のアメフト関係者だ。

「昨年の甲子園ボウルでは日大が勝ちましたが、スコアは23対17という僅差であり、力量の圧倒的な差を証明するものではありませんでした。流れひとつで負けてもおかしくない試合でしたし、観ている私もそう感じました。

 これまで日大は甲子園ボウルで21回の優勝経験があり、過去には5連覇を筆頭に4連覇や3連覇も成し遂げています。しかし、07~14年の間に両チームは甲子園ボウルで4回対戦して、すべて関学大が勝っています。私が見る限り、今年は日大と関学大の力はイーブンで、どちらが勝ってもおかしくない状況でした」(前出のアメフト関係者)

 一度、優勝に返り咲いたぐらいでは復活とは認めてもらえない――それほどの名門チームが日大であったといえる。加えて、その前にはあと一歩のところで関学大に苦渋をなめさせられてきた経緯がある。そのため、内田前監督は「連覇は絶対条件」と考えたのかもしれない。

「内田さんにとって、昨年の復活優勝はこの上ないほど甘美なものだったはずです。なにしろ、27年ぶりの悲願を達成したわけですから。まわりの日大関係者からどれほど喜ばれ、持ち上げられたことでしょう。おそらく、“人生最高の成功体験”といっても過言ではないと思います。それだけに、どうしても今年は連覇したかったのではないでしょうか。実際、『連覇して初めて名監督だ』という声もあり、それは内田さんも感じていたはずです。

 連覇のためには関学大を倒さなければなりませんが、関学大を倒すには『昨年と同じスパルタ練習ではダメだ』と感じていたはずです。そして、関学大の司令塔であるクオーターバックにケガをさせるのがもっとも近道と考えたのでしょう」(同)

 だからこそ、内田前監督は井上前コーチを通じて、宮川泰介選手に「ケガをさせろ」という意味で「つぶせ」という指示を与えた――そう、この関係者は見ている。

「アメフトに限らず、ほかのスポーツでもそうですが、大きな目標を達成すると選手たちの間に満足感や達成感が芽生えてしまい、翌年に転落するケースが少なくありません。スポーツにおいて連覇が難しいのは歴史が証明していますが、『昨年の栄光を逃したくない』との強い思いを内田さんから感じていました」(同)

内田前監督は日大理事長の座も狙っていた?

 内田前監督はアメフト部を率いていた一方で、日大の常務理事という重責も担っている。日大グループにおけるナンバー2のポジションだ。5月23日に行われた記者会見で、内田前監督は学内に設置される第三者委員会の調査が終わるまでは常務理事の職務を一時停止して謹慎することが明らかになった。

「辞任」ではなく「謹慎」という処分に、「保身」の意図が透けて見える。アメフト部の部員は監督やコーチに絶対服従が当たり前であり、首脳陣、とりわけ絶対君主たる監督についてはマイナスとなる証言は出てこないと判断したのだろう。

 つまり、巨大組織たる日大のパワーや人脈をもってすれば逃げ切れると考えたのだろうが、この計算は見事に狂った。反則タックルの指示を頑なに認めない姿勢が日本全体の怒りを買い、今や部員たちも反旗を翻す事態に陥りつつある。

 23日の会見からの数日を見ても、その流れは明らかだ。翌24日には日大アメフト部の父母会が緊急理事会を開き、父母会会長は「(反則の)指示があったと聞いている」と語っている。また、現役部員たちからは、監督やコーチの“嘘を暴く”声明文を発表する動きもあると聞く。

 関東学生アメリカンフットボール連盟に加盟している各校は秋の公式戦での日大との試合を拒否する流れになっており、関学大は日大との定期戦の中止を発表した。また、関東学連の規律委員会は内田前監督に除名、井上前コーチに資格剝奪という処分を科す方針だ。

 八方ふさがりとなった内田前監督は心身の疲労を理由に入院しているが、その姿勢は、まるで証人喚問や追及から逃れる政治家や官僚のようだ。

「大学のナンバー2では飽き足らず、理事長の椅子も狙っていたと聞きますが、そのためにも、日大アメフト部をかつてのような栄光の座に導く必要があったのかもしれません」(同)

 この言葉を聞くと、今回の騒動に一貫して流れる内田前監督の“思惑”が見えてくるのではないだろうか。
(文=伊藤遥雄/ライター)

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