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どうしたんだ『あなたには帰る家がある』!感動押し付け家族ドラマ化で突然つまらなく!

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 中谷美紀主演の連続テレビドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系)の第9話が8日に放送される。直木賞作家の山本文緒が1994年に著した同名の小説をもとに、大河ドラマ『花燃ゆ』や『1リットルの涙』などを手掛けた大島里美が脚本を手掛けるこのドラマは、2組の夫婦が繰り広げる愛憎劇を描く作品だ。

 最終回直前回となるが、簡単に前回を振り返っておきたい。第8話は1日に放送されたが、平均視聴率はその前の回から1.3ポイント下がって7.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だった。ドラマが佳境に入ったにもかかわらず、急激に面白くなくなったことが要因かもしれない。

 簡単に言うと、これまでに2つの山場があった。佐藤秀明(玉木宏)と茄子田綾子(木村多江)の浮気が双方の配偶者にバレるまでがその1。そして、秀明と妻の真弓(中谷)が夫婦としてやり直すか離婚するかが決着するまでがその2である。前回の第7話で秀明と真弓の離婚が成立したため、第8話からは新たな展開ということになる。

 新たな展開と言えば聞こえはいいが、ここから想定される第3の山場としては、秀明と真弓がやり直すかどうかくらいしかないだろう。公式サイトでは当初より「ラストに起きる温かな奇跡にも注目」とハッピーエンドがほのめかされていることから、復縁はしないまでも、娘の両親として良好な関係を取り戻すという、“ありがち”な結末に落ち着く可能性も十分ある。問題は、そこに至るまでの過程がおもしろいのかどうかだ。

 結論から言えば、新たな展開の幕開けとなった第8話は、かなり残念な出来だった。秀明と真弓の娘である麗奈(桜田ひより)に急にスポットが当たり、父と娘が親子の絆を取り戻す話が長々と描かれたのだ。離婚が子どもたちに影響を与えるのはその通りだが、視聴者の大半は「娘の話はどうでもいい」と思ったに違いない。視聴者がこれまで楽しんでいたのは大人の世界でのバトルであって、親子愛の話ではない。

 遮断機の降りた踏切越しに、秀明と真弓が「がんばれー!」と麗奈に声援を送り続けるという、あまりにも“寒い”シーンもあった。最初からそういう路線の家族ドラマならわかるが、ドロドロ系のドラマにはまったくそぐわない演出で、脚本が迷走している。だいたいにして、中学生の娘があんなに大声で街なかで声援を送られたら、ウザすぎて反発してしまうはずだ。それなのに、制作側から「ここで感動してくださいね」と押し付けられているようで、シラけてしまった。

 そんな視聴者の気持ちを置いてきぼりにして、「三人がいい」とつぶやく麗奈。ついさっきまで秀明に反発していたのに、「がんばれー」の連呼で許す気になったらしい。このドラマ、夫婦生活の描写はかなりリアルだったが、女子中学生の描き方は随分適当である。

 そんななか視聴者の話題を集めたのは、秀明に執着する綾子役の木村多江だ。真弓が秀明のアパートに物を届けようとしているのを見るや、スカートをまくってダッシュして先回りし、勝手に持ち去ったアパートの合鍵を使って部屋の中に入り込んだのだ。おとなしそうに見える綾子が微笑みを浮かべながら林の中を駆け抜けるシーンは意外性があっておもしろく、インターネット上でも「思わず笑った」との声が多かった。

 ただ、走るシーン自体はおもしろかったものの、綾子の役柄については「だんだんつまらなくなってきた」との声も聞かれる。秀明に執着しては、本人に「やめてくれ」と言われる行為を繰り返すばかりで、“尺稼ぎ”にしか見えなくなってきているからだ。やっていることも、ストーカーもどきから、ただの犯罪者になっており、何を考えているのかわからない「壊れた人」ならではの恐怖感が薄れてしまった。

 さて、予告によれば、第9話では真弓に密かに思いを寄せるカレーショップの店主・圭介(駿河太郎)にもスポットが当たるようだ。これまた本筋からは離れたどうでもいい話で、完全に尺稼ぎのエピソードに思える。中盤まで役者陣の優れた演技でドラマファンの話題となっていただけに、終盤での大失速はつくづく残念だ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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