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堀田秀吾「ストレス社会を科学的に元気に生き抜く方法」

梅雨、ダルさや体調不良を解消する方法? なぜ短時間睡眠だと太る?

文=堀田秀吾/明治大学法学部教授
梅雨、ダルさや体調不良を解消する方法? なぜ短時間睡眠だと太る?の画像1「Gettyimages」より

 だんだんと暑さを感じることも増えてきました。あたたかくて気持ちいい季節もつかの間、今年もまた梅雨の時期が近づいてきましたね。梅雨の時期といえば、あじさいやジューン・ブライドなどの華やかなものも浮かびますが、やはり何よりもジメジメとした雰囲気、雨に悩まされる方が一番多いのではないでしょうか。

 雨の日はなんだか気分も晴れない、面倒で外に出たくもないし、となんだか憂鬱な気分になりますよね。実はこれは気のせいではなく、自律神経の乱れからくるものだったのです。

 まず、自律神経について簡単に説明しましょう。自律神経は、我々の意思に関係なく、常に心臓の鼓動、血圧、ホルモンの働き等を調整している神経です。そして自律神経のなかには、自律神経と副交感神経の2種類があります。その(細かいほうの)自律神経のなかにも、緊張・興奮作用によって心身を活発にする「交感神経」と、休息・鎮静作用によって心身をリラックスさせる「副交感神経」の2種類があります。通常、交感神経が優位に働くときには副交感神経の働きが抑えられ、逆に、副交感神経が優位に働くときには交感神経の働きが抑えられます。このように、両者の自律神経が一定のリズムでシーソーのようにバランスよく働くことによって、私たちの健康は維持されています。

 では、雨の日には、自律神経にどのような悪影響が現れやすいのでしょうか。雨が降り始める前になると、気圧が徐々に下がって、低気圧になります。すると副交感神経が優位に働くようになり、血管が拡張し、筋肉はゆるんできます。雨が降りはじめる前には体がだるくなり、眠くなったり疲れやすくなったりするのは、このためです。先ほどお伝えしたように、自律神経は、交感神経と副交感神経がバランス良く交互に働いています。ところが、いずれかの神経が過度に働いたり、シーソーのリズムが乱れたりすれば、自律神経がパニック状態に陥ってしまいます。

 こうして自律神経の働きが乱れると、体にさまざまな悪影響が現れてきます。雨の日に頭痛や耳鳴りがするという人も多いですよね、それは自律神経の乱れが原因と考えられています。

昼寝の効用

 そんなやっかいな自律神経の乱れを一時的に整える効果的な方法として、15分程度の昼寝をしてみましょう。産業医学総合研究所の高橋らの研究ですが、15分間、45分間と昼食後に被験者に昼寝をするグループと昼寝をしないグループに分け、昼寝前、30分後、3時間後と脳波を測りました。結果、昼寝をしたグループは、眠気を感じる程度が低くなり、副交感神経が優位になっていることが観察されました。そして、15分間昼寝をしたグループは課題のパフォーマンスも上がりました。

 また、アメリカ航空宇宙局(NASA)の研究では、26分の睡眠で、パフォーマンスが34%向上し、注意力が54%も上がることが観察されました。

 昼寝するときに注意していただきたいのは、寝すぎると逆に眠気が増してしまったりするので、寝る時間は30分以内にしてください。また、滋賀大学の大平・丸茂の研究によると、音楽を聴きながら昼寝をすると睡眠は深くなるものの、起きた時の眠気が強くなったり、課題への反応が鈍くなったりするようです。ただ昼寝すれば良いというものでもなさそうです。

 このように、昼寝には一定の効果がありますが、やはり大切なのは夜の睡眠です。上述の実験は、夜は夜でちゃんと寝ていた被験者たちが対象になっています。夜に十分に寝ていなければ、昼寝だって効果はないのです。

睡眠と体重

 睡眠不足は身体に悪いということは、皆さん、なんとなくご存知かと思うのですが、疲れが取れない、昼間に眠気に襲われて仕事が捗らないなどの、よく知られている問題以外にもさまざまな問題が実験によって指摘されています。

 たとえば、フロリダ大学のマークウォルドらの研究では、1日5時間の睡眠での寝不足状態を5日間続けた状態のグループ、そして1日9時間の睡眠という十分な睡眠状態を5日間続けた状態のグループという2つのグループを比較しました。

 この研究の結果としては、寝不足のグループは平均して1キロ弱も体重が増加し、その後、寝不足グループに十分な睡眠をとるようにさせたところ、体重は減少したのです。また、寝不足のときには、朝ごはんは少なくなりがちであるが、トータルで1日に食べる量は増え、夕食後にも、また炭水化物やタンパク質、繊維質等を食べてしまうという傾向が見られました。その理由は、起きている時間が長ければ長いほど、活動時間が長くなります。そして、その活動を維持するためにエネルギーを使わなければならないので、エネルギー補給のために食べ物を食べてしまうからだと考えられています。ちなみに、実験の結果、女性のほうが睡眠不足による体重増加傾向が顕著でした。

 次に、カリフォルニア大学バークレー校のマンダーらの研究では、睡眠が少なくなると、それに比例するように記憶力の低下が認められるということが明らかになりました。

 この研究は、人間の老齢化に関する研究なのですが、年齢を重ねると睡眠時間が短くなり、深く眠る時間が少なくなります。脳は深く眠っている間に記憶を定着させるのですが、睡眠時間が短く、深く眠る時間が少ない場合、記憶を定着させる時間がなくなり、結果的に記憶力が悪くなってしまうということです。

 結局、5月病対策として最も有効なのは、しっかり寝て、体内時計を整え、生活リズムを整えることです。

 一口に生活リズムを整えるといっても、必要な睡眠時間、心地の良い生活習慣は人それぞれです。最近の研究では、1日のリズムをつくる遺伝子は人によって型が異なり、日周リズムが1時間ほど異なることがわかっています。

 自分に合わない型の生活リズムをつくっても、かえって身体にはストレスになってしまいます。自分の体調、状態と相談しながら、どんな生活リズムが自分にとって理想なのか、それを見極めながら整えていきましょう。昼食後の昼寝の時間も確保できるようになると、さらに良いでしょう。
(文=堀田秀吾/明治大学法学部教授)

堀田秀吾/明治大学法学部教授

堀田秀吾/明治大学法学部教授

 専門は社会言語学、理論言語学、心理言語学、神経言語学、法言語学、コミュニケーション論。研究においては、特に法というコンテキストにおけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、法学、脳科学など様々な学術分野の知見を融合したアプローチで分析を展開している。執筆活動においては、専門書に加えて、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書・語学書を多数刊行している。

Twitter:@syugo_h

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