NEW
企業・業界

日本の自動車メーカーが消える可能性はゼロではない理由

取材・文=A4studio
【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 また、前出の井上氏いわく、「EVは二極化する時代が到来するだろうと予想しています。エントリー車的に価格を抑えた“安かろう悪かろう”なモデルが続々登場しつつ、対して“車としての価値”をきちんと提示できるような高級EVも登場するでしょう」とのこと。

 低価格重視でコストを極力おさえたようなエントリーモデルであれば中国メーカーが強いかもしれないが、EVのハイエンドモデルであれば“ローマは一日にして成らず”とばかりに、長年、世界の自動車業界を牽引してきた日本メーカーに分がありそうだ。

日本メーカーが“組み立て屋”に成り下がらないためには?

 今、大きなパラダイムシフトが進んでいると言われる自動車産業、どのような未来になっていくのだろうか。

 井上氏は、「自動車はもはや“鉄の塊”ではなく“ソフトウェアの塊”になっており、海外ではプラットフォームの座をめぐる争いが始まっています。自動運転車とEVの開発は既存の自動車メーカーだけでは成り立たず、続々参入しているIT企業や新興企業がリードしている面もあるわけです。また、バーチャル・エンジニアリングといって、ユーザーには見えない部分の開発や製造のプロセスもデジタル化で大きく変わってきています」と語る。

 バーチャル・エンジニアリングとは、たとえばパソコン上で路面、天候、スピード、運転者の力量といったさまざまな条件を設定することで動作シミュレーションなどができ、実際に現実の試作車をつくる必要なく開発を進められるというもの。このバーチャル・エンジニアリングを導入することで、試作車をつくらず商品企画段階で仕様をほぼ決定できるため、開発をスピーディーに進められ、開発コストも抑える効果もあるなど、メリットは多大なのだ。バーチャル・エンジニアリングは開発の効率化という枠におさまらず、自動車産業の開発思想を抜本的に変えつつあるのである。

 このバーチャル・エンジアリングにおける先進国はドイツ。実際、昨年9月にフォルクスワーゲングループが、「ITバーチャルエンジニアリングラボ」でバーチャルコンセプトカーを使用し、次期ゴルフを開発していることを発表し、注目を集めていた。試作車を作製することなく、複数のコンピュータに接続したVRゴーグルを装着しエンジニアが開発を進めるバーチャルコンセプトカーは、自動車開発のパラダイムシフトにおける代名詞とも言えそうだ。

 しかし、ドイツをはじめとした欧州ではバーチャル試験のデータが認証試験で認められるようになっているが、残念ながら日本はこういった制度の点でも遅れている。

「このままでは日本のトヨタ日産、ホンダ、マツダなども徐々に存在感を失っていき、消えてなくなる会社が出てくる可能性もゼロではないでしょう。自動車の部品も海外勢に支配されてしまうかもしれず、日本メーカーは買ったものを組み立てるだけの“組み立て屋”になってしまう可能性も否定はできません」(井上氏)

 ルノー・日産連合が世界2位、トヨタは単独で世界3位など、単純に2017年の販売台数で見れば日本メーカーはまだまだ安泰のように思えるが、油断は禁物だろう。実際、これ以上、後手に回らないようにと手を打っている日本メーカーもあり、「トヨタは米国の半導体メーカーであるエヌビディアと提携するなど、新興勢力とも手を組み始めています。新興企業と日本メーカーが足りないところを補い合うかたちで、パラダイムシフト後の業界で生き残ろうとしているのです」(井上氏)とのこと。

 元日産COO(最高執行責任者)で現産業革新機構会長の志賀俊之氏は、2050年にはガソリンスタンド、運転免許証、信号機、自宅駐車場が消えている可能性もあるとしている。そういった大変革も予想される自動車業界の未来で、日本メーカーが変わらず強い存在感を示していることを期待したい。
(取材・文=A4studio)

関連記事