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浜田和幸「日本人のサバイバルのために」

ジョージ・ソロス、日本・中国・米国らの第3次世界大戦勃発を予想

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中国と周辺国との軋轢は「沸点」

 最近、このソロス氏が注目しているのが中国の動きである。というのも、同氏の見立てによれば、「中国は遅かれ早かれアメリカを抜き、世界経済の新たな牽引車として君臨するだろう」と目されるからだ。しかし、2014年以降、ソロス氏は「中国と日本を含むアメリカの同盟国との間で、第3次世界大戦が起こる可能性が高まっている」との衝撃的な発言を繰り返すようになった。

 中国と周辺国との軋轢は「沸点に達している」とソロス氏が指摘するように、激化する一方であり、そうした目に見えるかたちで深刻化する事態を危惧してのことであろう。同氏の警告を待つまでもなく、こうした緊張状態が続けば、一触即発の事態もありうる。当然のことながら、関わる分野が政治、経済、文化を問わず、中国とアメリカ、日本との間で軍事的な衝突が起こることも念頭に置き、冷静な情勢判断のレーダーを磨いておく必要がある。中国内部に情報パイプを持つソロス氏の予測であるだけに無視できない。

 というのも、北朝鮮情勢をめぐってアメリカと中国は頻繁に意見交換を重ねているが、中国はのらりくらりとトランプ大統領からの要請を骨抜きにしているからだ。中国の分析では「アメリカは北朝鮮危機にかこつけて、将来のライバルである中国への攻撃を準備しているに違いない。韓国に配備したTHAADは中国を狙ったもの」となり、双方の不信感は払拭されていない。

 実は、アメリカの軍事関係者の間にも同様の見方があり、近い将来、米中激突の可能性は避けられないというほどだ。その時、日本はどう対応すべきであろうか。当面の北朝鮮情勢に一喜一憂するのではなく、その先の米中対決の可能性も視野に入れた危機回避への道筋を模索する必要がある。

 そのためには、中国を国際的な金融及び安全保障のなかに、いかに組み込むかという国際政治上の知恵が求められる。日本では知られていないが、ソロス氏の「オープン・ソサエティー」は中国においても、さまざまな活動を展開してきている。中国国内の民主化や自由主義経済を推進することを目指しているようだが、中国政府はそうした動きを警戒し、介入や嫌がらせを続けているという。

 もちろん、ソロス氏は「こうしたロシアや中国の見方は誤解と偏見に基づくもの」と一笑に付していることはいうまでもない。それどころか、中国政府から要請があれば、中国の抱える環境問題やエネルギー問題などの解決はもちろん、このところ一進一退を続ける北朝鮮との関係においても「打開策に必要な資金援助も惜しまない」とまで発言している。

 とはいえ、表向き急成長を遂げる中国に対しては、投資家として今後も機会を逃さず投資の拡大を目指しているとの発言を繰り返す。しかし、肝心の中国政府の壁はいまだに厚いようだ。さまざまな障壁があるとはいえ、中国市場で大きな成功を収めている外国の投資家は数限りない。彼らはそれなりに中国当局と妥協しつつ、お互いのメリットを追求するサバイバル戦士ばかりである。慎重に検討するという姿勢に終始する日本とは大違いだ。

核不拡散条約の締結が必要

 政治的課題に関してもソロス氏は独自の考えを育んでいる。例えば、北朝鮮が進める核兵器開発についてである。ソロス氏によれば、「核兵器開発のリスクを回避するのは、持てる国も持たざる国も、例外なくすべて国際的な監視体制下に置く」という核不拡散条約の締結が必要であるとの主張を展開。

 このような新たな条約の下で、ある国が核兵器を先制攻撃的に使用する決定を下した場合、迅速かつ確実に摘発できる状況をつくり、それらの保有核兵器を封印できるような仕組みにしなければ、根本的な問題の解決は難しい。もっともな主張である。

 加えて、高度濃縮ウランはすでに大量に存在しているわけで、自前の製造に頼らなくとも、既存の核分裂物質の入手は十分可能である。これでは、まったく安心できないだろう。であるならば、さらなる条件が不可欠となるはずだ。それは核兵器の製造に必要な核分裂物質の生産と処理に関しても、国際的な監視体制を実施するという項目である。

 ソロス氏によれば、「そのタイミングを確実に予測することはできないが、現状が続けば、いつ核戦争が勃発してもおかしくない」との結論になる。重要なことは、このような極めて危険な時代に我々が生きているという現実を認識することであり、そうした危機を回避するために、新たな条約締結に至る道筋を明確に打ち出すことが求められるというわけである。

 中国は国内において、不平、不満分子によるデモや爆破事件などテロ行為の急増を抑えるため、「中国の夢」というスローガンの下、国内での愛国主義運動を強化。普遍的な民主化の概念を封じ込める動きが加速している。そのため「中国における民主化の限界が見えた」というのがソロス氏の見立てである。

 とはいえ、逆説的ではあるが、ソロス氏の分析では「中国を関与させない国際政治は歴史的に禍根を残すことになる」との視点も無視できない。そうした観点から中国のリスクとチャンスを言葉巧みに宣伝する稀代の投資家の真意を把握することは無駄ではないだろう。

ソロスとアベノミクス

 一方、ソロス氏はメディアの使い方が天才的だ。自らの情報に内外のメディアが飛びつくような極秘情報をちりばめる手法には、世界のジャーナリストたちもついつい乗せられてしまう。ロシアによる力ずくのクリミア併合や東部地区への軍事進攻により危機的な状況に直面するウクライナの内部情報を織り交ぜながら、「新生ウクライナを救え」と題するキャンペーンを展開。すると、米紙ニューヨーク・タイムズをはじめ影響力のあるメディアも民主主義を標ぼうする立場上、こぞって彼の主張を転載せざるを得ないというわけだ。

 特に注目すべきは、ドルに代わる国際決済通貨として、人民元の可能性を国際的に宣伝し、世界銀行やIMFを巧みに動かし、ウクライナへの投資を加速させている点である。過去平均100倍のリターンを手にしてきたソロス氏ならではの、新たな国際政治の混乱を逆手にとるという手法がどこまで成功するものか。大いに注視する価値がある。

 また、ソロス氏はゴールドマン・サックスとも連携し、日本のアベノミクスにも深く関わるようになっている。日本銀行を通じて金融緩和という名の大量の資金を市場に投入することで、年率2%のインフレを実現しようとする安倍晋三首相にとって、ソロス氏のアドバイスは極めて心強いものとなっているようだ。

 いずれにせよ、天才投資家ソロス氏にとって安倍首相は動かし甲斐のある政治家と映っているようだ。かつてソロス氏は自らを「一種の神ではないかと思ったことがある」と告白。それほど強烈な自己愛にもつながる自信があってこそ、イングランド銀行を跪かせるほどの金融プレーで勝利し、その後も世界の金融マップを塗り替えるほどの技を発揮しているから見上げたものだ。
(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

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