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なぜ『あなたには帰る家がある』は終盤になって、突然つまらなくなってしまったのか?

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 中谷美紀主演の連続テレビドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系)の第9話が8日に放送された。平均視聴率は前回より0.5ポイント上がって8.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)だった。直木賞作家の山本文緒が1994年に著した同名の小説をもとに、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』や『1リットルの涙』(フジテレビ系)などを手掛けた大島里美が脚本を手掛けるこのドラマは、2組の夫婦が繰り広げる愛憎劇を描く作品だ。

 これまでのあらすじをごくごく簡単に書くと、サラリーマンの佐藤秀明(玉木宏)と主婦の茄子田綾子(木村多江)が浮気をして双方の配偶者にバレ、秀明と妻の真弓(中谷)は離婚し、綾子は夫の太郎(ユースケ・サンタマリア)を捨てて一人暮らしを始めた――ということになる。第8話からはその後の4人の様子を描いているが、やはりストーリー的には秀明と真弓の離婚がピークだったようで、話がかなり迷走している。

 第9話では、カレーショップの10周年パーティーで4人が顔を合わせる様子が描かれた。申し合わせて集まったわけではなく、パーティーに真弓が来ることを知った秀明が真弓に会いたい一心で店を訪れ、秀明を追って綾子が、綾子を追って太郎がそれぞれ店を訪ねたという流れだ。

 TBSは「地獄のカレーパーティー」とのあおり文句でこれを予告していたが、実際は非常につまらないものだった。綾子は山ほどつくってきた手料理を店内で広げ、真弓は人の話を聞かずに怒っているばかり。秀明も自分の一言で場が収まる立場なのに、何も言えずにオドオドするばかり。4人の間で繰り広げられるヒリヒリするような緊張感のある会話劇を期待していたのに、ただただイライラさせられるばかりで中身はスカスカである。

 仮にも臨時の店員として店を手伝っている立場の真弓が大声で怒鳴り散らすのも、あり得ない。いつも上から目線で自分が正しいと信じ、周りが見えていない真弓という人物を描写するためなのだとは思うが、それは今までで十分描かれたはず。ほかの登場人物も同じで、綾子のじめっとしてまとわりつくような感じも、秀明の優柔不断な感じも、今までさんざん描かれたことを「地獄のカレーパーティー」と称して再び描いただけ。何も進展していないし、なんの必然性もない。尺稼ぎのために同じことを繰り返しているにすぎない。

 尺稼ぎといえば、秀明と真弓の娘である麗奈(桜田ひより)も話を引き延ばすためだけに存在しているようなキャラクターだ。第8話では、本筋とはあまり関係のない“親子の絆エピソード”が描かれたが、第9話ではあろうことか綾子の息子・慎吾(萩原利久)と急接近しはじめた。麗奈は綾子が家に乱入してきたことで少なからず心に傷を負ったはずだが、その息子とは何のわだかまりもなく付き合えるのか。大人たちの描き方に比べて、随分人物描写が適当に思える。おそらく脚本家も麗奈にそこまでの思い入れがなく、何となく適当に動かしているのだろう。

 これ以外にも、このドラマには扱いが適当なキャラクターが目に付く。カレーショップの店主・三浦圭介(駿河太郎)が真弓に密かに思いを寄せていたという設定は無理やりな感じがするし、秀明の同僚・森永桃(高橋メアリージュン)も最近はストーリーの中で持て余され気味だ。真弓が働く旅行会社の社員役で序盤に登場していたトリンドル玲奈にいたっては、いつの間にか存在そのものがなかったことにされている。職場での真弓を描く気がなかったのなら、同僚役でトリンドルをキャスティングする必要があったのか。

 だらだらと同じことを繰り返したり、メインの4人とは関係の薄いストーリーを広げたりしているうちに、視聴者からの評判も急落している。筆者もいいかげんさっさと決着をつけてほしい気持ちでいっぱいだが、最近のドラマには珍しく11話まであると知って、少々うんざりしている。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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