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荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」

金正恩、詐欺師的交渉術でトランプに完全勝利…米韓軍事演習を中止させた巧妙な「仕掛け」

文=荻原博子/経済ジャーナリスト

 米朝首脳会談が行われた6月12日、トランプは「米韓合同軍事演習を中止する」と表明して大騒ぎになりましたが、さらに「韓国の核の傘をなくす」などということになったら、どれほど大きな波紋が広がるか想像がつきません。つまり、一朝一夕にできることではないのです。

 だからこそ、北朝鮮にとっては「朝鮮半島の非核化」を板門店宣言で明文化することが大切であり、それが叶えば、アメリカに「非核化しろ」と言われても「いいですよ。その代わり、朝鮮半島の非核化なのでアメリカも核をどけてください」と言い返せるわけです。そして、そうしているうちに結論をずるずると先延ばしにできる。

 独裁体制の金正恩は何事もなければ当分の間はトップに居座り続けられますが、アメリカ大統領には任期があります。トランプが金正恩に約束させた「完全な非核化」も、トランプの任期中に実現しなければ約束ごと消滅するという計算なのでしょう。

 もうひとつ、「南北和平」を前面に打ち出し、「朝鮮はひとつの国だ」ということを世界にアピールできれば、アメリカに対する抑止力になります。「韓国とはひとつの国だ」と言っている北朝鮮を、韓国の同盟国であるアメリカが攻撃するのは難しいということです。

 中国を後ろ盾にし、韓国に抱きついて身の安全を確保した金正恩が次に打った手は、アメリカを翻弄することでした。

「手の内は明かさず」会談中止にも備え

 アメリカが突きつける「非核化」という条件を「朝鮮半島の非核化」にすり替えるため、金正恩はもうひとつの大きな博打を打ちます。それは、トランプを揺さぶって交渉を有利に導くための博打です。

 6月12日に決まっていた米朝首脳会談を、トランプは5月24日にいきなり「中止する」と発表しました。その理由は、金正恩の部下がトランプ政権に対して敵意丸出しの姿勢で挑発するなど、いくつかの気に入らないことが立て続けに起きたからとのことでした。

 これに対して金正恩は平謝りの姿勢でしたが、実際はこれも金正恩がトランプを怒らせるために意図的に仕掛けたものでしょう。なぜなら、北朝鮮で金正恩に無断でトランプを怒らせるような発言をすれば、その人物はすぐに処刑されるはずですから、そんなことをする人はいないでしょう。だとすれば、一連の挑発は金正恩本人の意図で行われていたとしか考えられません。

 その挑発に対してトランプは怒ったわけですが、北朝鮮はトランプが会談の中止を発表するタイミングで、豊渓里にある地下核実験場を爆破し、その映像を世界中に流して「我々は、本気で核の廃絶をしようとしている」とアピールしました。

荻原博子/経済ジャーナリスト

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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