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老舗・任天堂、Cygamesと提携で貪欲にノウハウ吸収…スマホゲーム世界進出へ執念

文・取材=A4studio
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 では、なぜCygamesが海外で成功を収められているかといえば、腰を据えてゲームを根付かせ、息長く展開するための地道な努力をしているからといえるでしょう。国産スマホゲームの海外展開の仕方は、とにかく短期集中で資金をつぎ込んで、ダメそうならぱっと撤退するスタイルが一般的。そんななかでCygamesは国によって細やかにプロモーションの仕方を変えることや、現地ユーザーと肌感覚で触れ合えるようなリアルでのイベントを行うことを、とにかく重視しています。そこで細かいノウハウをコツコツと積み上げることで、ゲームを現地に根付かせることに成功したのです」(同)

 任天堂とCygamesが急接近となると、これまで任天堂と協業してきたDeNAも心中穏やかではいられまい。今後、任天堂とDeNAの関係に変化はあるのだろうか。

「任天堂とCygamesが業務提携するからといって、DeNAがお役御免となるわけではありません。任天堂はDeNAとの協業による業績を評価していますし、また前々から他社とも協業していくとは伝えていました。おそらく今後も『スーパーマリオラン』のような任天堂の既存コンテンツを使用するゲームはDeNAが担当し、完全新作の制作や海外展開をCygamesと共に行うかたちとなるのではないでしょうか」(同)

IP育成上手の任天堂とCygamesは似た者同士

 家庭用ゲーム会社として長い歴史を持つ任天堂と、新鋭ながらスマホゲーム会社として不動の地位を築くCygames。一見すると毛色の違う2社だが、実は根底に共通する部分があると多根氏は語る。

「ゲームのキャラクターや設定など、コンテンツそのものを指す『IP(知的財産権)』という言葉がありますが、CygamesはIPをゼロから地道に育てられる会社でもあります。実はIPをきちんと育てられる会社というのは、思いのほか少ないもので、たとえばレベルファイブが展開する『妖怪ウォッチ』などは社会現象になったにもかかわらず、今や人気や売上はダダ下がりで消滅寸前です。

 その一方でCygamesは、『神撃のバハムート』というコンテンツをゼロから地道に育て上げただけでなく、キャラクターを別の新作ゲームに登場させるなどして、人気を持続させるための努力もしっかり行っています。このような展開方法は、『スーパーマリオ』シリーズを何十年も大切に育て、ときにはマリオをほかのゲームに登場させる任天堂の戦略と非常に似通っています。そういう意味では、任天堂とCygamesは企業文化が近い、いわば似た者同士なのです。

 任天堂とDeNAの協業は、お互いがないものを補い合うようなかたちでした。はっきりいって昔の任天堂はネットの扱いがヘタだったため、スマホゲームに関する歴史もノウハウも持つDeNAと組んで、イチからスマホゲーム市場を開拓していったのです。それがある程度成熟し、限界も展望も見えてきたため、次は企業文化が似ているCygamesと組んでみようということになったのではないでしょうか。IPを大事にするスマホゲームを展開できれば、家庭用ゲームが不調となってパッケージ版のゲームソフトがあまり出せなくなるような時期にも、任天堂IPのキャラクターをそのスマホゲームに出演させるなどして、IPの寿命を存続させることもできます。それこそマリオなどはいい意味でフットワークが軽いキャラクターなので、Cygamesの『アイドルマスター』というゲームに登場し、アイドルデビューする日も来るかもしれません」(同)

 かつてない好調ぶりのなかでも浮かれることなく、自社にないノウハウを築いているとなれば、それが新興ゲーム会社であっても積極的に手を組んでいく。近年、他業界ではかつての大企業の凋落が多く見られるが、任天堂のこのような姿勢こそ見習うべきではないだろうか。
(文・取材=A4studio)

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