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江川紹子の「事件ウオッチ」第106回

がん患者へのヤジ、過労死遺族への暴言…“命”の問題を軽視する安倍自民の責任と罪

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命の問題と真摯に向き合う与党議員はどこへ

 これは一強他弱のなかでの緩みとかおごりとかいった次元の問題ではなく、本来は国会議員になってはいけない類いの人が、国民の民主党政権への反発をバネに当選してしまい、その後も安倍自民の選挙上手のお陰で議席を維持してしまっている、というケースが少なからずあるのではないか。

 それは、そうした者を自党の候補者にし、当選させ、しかもまともな教育もしていない、自民党の責任でもある。せめて自党の長老議員である尾辻氏が行った名演説くらい、全員に見せて国会議員たる者の努めを考えさせるべきだろう。

“魔の3回生”ばかりではない。今年3月には参議院予算委員会の公聴会に公述人として出席した過労死遺族に対し、渡辺美樹参院議員が「働くことが悪いことであるかのような議論に聞こえてきます。お話を聞いていますと、週休7日が人間にとって幸せなのかと聞こえてきます」と述べて問題になった。

 渡辺氏は、居酒屋チェーン「和民」などを展開するワタミの創業者だが、そのワタミでは26歳の女性が入社2カ月で自殺。後に過労死認定されたが、それを受けて、すでに国会議員となっていた渡辺氏は、こうツイートした。

「労務管理できていなかったとの認識は、ありません。ただ、彼女の死に対しては、限りなく残念に思っています」

 そういう彼を、よりにもよって過労死遺族に対する質問者に据えた自民党自体は、命にかかわる問題を軽く見すぎていると言わざるを得ない。与党が圧倒的な多数を占めているため、最初から「いつ採決して法案を通すか」ということにのみ関心があり、いろんな人の意見を聞いたり議論をして、法案をより良いものに修正していくプロセスが軽視されているようにも見える。

 このような国会で、私たちの命にかかわる問題が扱され決定されていることに、改めて暗然たる思いがする。

 とはいえ、自民党の期の浅い議員のなかにも、命の問題に真摯に向き合い、これまでの国会の取り組みから学んでいる人が、いないわけではない。たとえば、自らもがんを経験した三原じゅん子参院議員は、2010年に当選して初めての国会質問で、山本氏について触れている。

「がんの撲滅に力を尽くされた先輩議員として参議院議員でありました山本孝史先生のことを思い出さずにはいられません。(中略)命を懸けて命を守る。がんイコールリタイアではない。私も山本先生から命のバトンを受け継いだ、そしてこの参議院に議員として今ここに立たせていただいているんだと感じております」

 三原氏は、昨年5月30日の参院厚生労働委員会でも、山本氏の名前を挙げて、たばこの受動喫煙の問題にしっかり取り組むよう厚労相に発破をかけ、エールも送った。

「私は、7年前に議員とさせていただいたとき、民主党の山本孝史先生の議事録をすべて読ませていただきました。私の記憶によれば、最後までたばこの政策に関して非常に心残りだというようなことを発言されていたと記憶しています。こうした『死者の英知』というものも引き継いでいくのが私は政治であり、過去に受動喫煙で亡くなった方たちの無念の魂というものを鎮めることもまた使命なのではないかと思っています。それがあしたを生きる子供たちの未来につながっていくのではないでしょうか」

「何度も言いますが、富める者、強い者の満足のみによって世の中が回っていくと思ったら大間違いです。政治は、病に苦しむ人、弱い人をどれだけ救ったかで判断されるべきだと私は思っています。強い者、強者の意見だけでなく、弱い立場にいる方々、そして苦しい中で亡くなっていった方々の立場にも立った法案を作っていくことこそ政治の役割だと思います」

 しかし、この時点で厚労省が受動喫煙防止のためにつくっていた対策案は、自民党厚生労働部会の議論のなかで大幅に後退。国会に提出された法案では、55%の飲食店は法案の「例外」とされ、喫煙可能となるという。

 今回の穴見暴言だけでなく、規制が骨抜きにされていった経緯を見るにつけ、「死者の英知」を引き継ぎ、命の問題と真摯に向き合う与党議員も「例外」的存在になっているのではないかと案ぜられてならない。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か – 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。
江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

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