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香川真司、小さくて細かった少年が「日本の10番」を背負うまで…香川が追い続けた背中

構成=安藤隆人/サッカージャーナリスト
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青山の背中を追い続けた香川

香川真司、小さくて細かった少年が「日本の10番」を背負うまで…香川が追い続けた背中の画像3後列左から2人目が青山

 中学卒業時に青山が名古屋グランパスU18(現U-18)に進んだことで、ふたりは離ればなれになってしまったが、その後も青山と香川は週1回のペースで連絡を取り合っていたという。

「僕が名古屋に行ってからも、毎週のように電話で話しました。真司はずっと『名古屋はどう? どういう練習しているの?』とか、『すごい選手いた?』とか、変わらず質問攻めでした(笑)。高1のときに名古屋から一度仙台に戻って、FCみやぎの練習試合を観に行ったんです。そうしたら当時中3の真司は、試合の中でボールタッチをしながらも、ずっと顔を上げてプレーしていたので、『うわ、めちゃくちゃうまくなっている』と驚きましたね」(同)

 名門Jユースに羽ばたいて行った青山に刺激を受けた香川は、よりサッカーに打ち込んだことで青山も驚くほどの成長を遂げていたのだ。そして、青山が高3、香川が高2の時、ついに同じU-19日本代表のチームメイトとしてプレーすることが実現した。当時、青山は不動のレギュラーで、香川はボランチとサイドプレーヤーのバックアップ的な存在だったが、ずっとサッカーでコミュニケーションを取ってきた先輩後輩は、同じ日本代表のユニフォームを着てプレーを重ねた。2006年のAFCU-19選手権(インド)準優勝、そして2007年のU-17W杯(カナダ)のラウンド16を経験した。

香川真司、小さくて細かった少年が「日本の10番」を背負うまで…香川が追い続けた背中の画像4前列右から2人目が香川

 そこからふたりの人生は、また別々となった。香川はセレッソ大阪からドイツのBVボルシア・ドルトムントに移籍し、さらにイングランドのマンチェスター・ユナイテッドでプレーした。2014年からは再びドルトムントに戻り、変わらぬ躍動を見せている。日本代表の10番も、すっかり板についた。

 一方の青山は、目標だった日本代表に入ることなくサッカー選手を辞め、新たな道に踏み出している。

「コロンビア戦のPKのとき、自分から蹴りにいったことにすごく感動しました。怪我をしたり、周りの批判も大きかったけれど、自分を信じてやってきたから、こういうシーンが巡ってきたのだと思います。あのシーンは、間違いなく真司がつくり出したものです。それをきっちりと決めたのは、彼がこれまでやってきたことが間違っていなかった証だと思います。W杯前は、世間の雰囲気を見ると、多くの人たちが日本代表は『どうせダメだろう』と考えていたようですが、それを覆したのは相当なタフさがあったと思います」(同)

 可愛い後輩の活躍に、青山は目を細めた。同時に香川の想いを力強く代弁する。

「真司は今大会に向けて、選ばれるかどうかとか関係なしで、ドルトムントでの日々と同じスタンスでやれたと思います。W杯だから何かを変えたとかではなく、これまでの経験の延長線上でした。真司からは常に『どんなことがあっても、自分のやるべきことは変わらない』という強い意志を感じていました。

 多くの人は、苦難に直面するとブレてしまうというか、『自分じゃない自分』を出さないといけないと思ってしまいがちですが、彼はまず怪我をきちんと完治させることと、自分のコンディションを元に戻すことに真摯に向き合っていました。それは簡単なようで、すごく難しいことです。でも真司はきちんと整理してやっていました。僕が思う彼の“やるべきこと”は、何か特別なことではなく、日々の積み重ねです。代表メンバーに入る、入らないは別として、入ったらしっかりと力を発揮できるように、きちんと照準を合わせていたのです」(同)

 どれだけ環境が変わっても、所属チームでも、代表でも、香川のサッカーに向き合う根本的なスタンスは一切変わらない。代表の10番、監督交代劇など、周囲からいろいろな雑音が入り、彼の背中には常にとてつもないプレッシャーがあった。だが、香川は決してそこから逃げ出さず、自分を信じて、やるべきことを変えなかった。そのエネルギーは想像を絶するほど大きく、香川の芯の強さを表している。

「今も会ってごはんとかに行くと、やっぱり質問してきますね(笑)。W杯メンバーに選ばれたときも、LINEで『おめでとう』と入れました。正直、それまではちょっと自粛していたのですが、今回はメッセージを送ったら『頑張ります』という返信をもらいました。真司は批判もされるけど、やっぱり国民に愛されている存在だと思う。それこそが彼の人間性です。僕も純粋に先輩・後輩としてがんばってほしいと思うし、少年時代から人間的な部分はずっと変わっていないことが彼のすごさだと尊敬しています。僕もずっと、彼に引きつけられて、今は心から応援しています。それは真司が真司のままだからこそだと思っています」(同)

 最後に青山は、ロシアの地で輝く背番号10にこうエールを送った。

「今の真司は本当にうらやましい。でも、僕ができなかったことを彼は叶えている。だからこそ、より輝いてほしい」(同)

(構成=安藤隆人/サッカージャーナリスト)

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