フィンランドが「世界一幸せな国」に選ばれるワケ
こんな愚痴をだらだらと言っても、フィンランドなど北欧の人々にしたら、「そんなもの大したことないじゃないか」とあきれられるに違いありません。なにしろ、北欧の国々は税金が非常に高く、物価もバカ高いのです。
フィンランドを例にすると、国税は7.71〜61.96%で日本と大きな差がありませんが、売上税(日本でいう消費税)は24%です。書籍や医療品は10%、食品は14%と優遇がありますが、それでも日本の消費税8%と比べたら、まったく違う世界です。そして住民税は日本の2倍の20%。これだけ見ると、そんな国には住みたくなくなってしまいます。
しかし、フィンランド人はそうは考えていないのです。僕はこれまで何度も、「フィンランドは税金が高くて大変だよね」と彼らに言ったことがありますが、税金について愚痴る人には出会ったことがありません。返事はいつも同じで、「税金の使い道に納得しているから不満はない」です。実際に、フィンランド人のおよそ8割が、高税を払うことに納得しているという公的データもあります。
フィンランドをはじめとした北欧では、社会保障がとても充実しています。生まれてから死ぬまで、国に保障されているのです。例を挙げると、小学校から大学院まで学費はすべて無料。また、病院で高度医療を受けても、子供を産んでも、すべて無料です。育児保障、失業保障、さまざまな制度に人生が手厚く守られています。ホームレスなんて見たことがありません。
ある時、フィンランド人に“老後の不安”について質問したことがありますが、彼らは質問の意味がよくわからないようでした。そのくらい、まったく不安のない人生を送っているのが北欧なのです。
フィンランドでの自動車購入の税金は100%です。車体価格の倍の金額を支払って、自動車を手に入れるわけです。そして、春を迎えると、2家庭に1家庭は持っているという湖や海辺の小さな別荘に、その自動車を運転して毎週末、出かけて行きます。夏休みの休暇では、家族と何週間もそこに滞在して、木を切り、つくった薪でフィンランド名物のサウナを暖めるのです。サウナで気持ちよく体が熱くなったら、目の前の美しい湖にそのまま飛び込みます。フィンランドならではの美しい景色が広がっています。フィンランド人は本当にサウナが大好きで、各家庭の自宅には、サウナを所有しているくらいです。サウナで汗をかいた後に飲むフィンランドのビールも最高に美味いです。そして、その後の夕食で食べるサーモンも最高。
北欧の冬は確かに暗く寒いのですが、国や市がしっかりと援助しているオーケストラ、演劇、オペラのチケットはとても安く、気楽に出かけて行く事が出来ます。そして、終演後、オーケストラの楽員行きつけのバーで、一杯飲みながら、夜が深まってきます。
今年、国連が発表した「世界で一番幸せな国」にフィンランド選ばれたこともよく理解できます。ちなみに、ランキングの上位は、毎年、北欧の国々で占められています。
(文=篠崎靖男/指揮者)