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梅原淳「たかが鉄道、されど鉄道」

新幹線、大阪北部地震でも「無事故・無脱線」を遂げた、知られざるスゴい仕掛け

文=梅原淳/鉄道ジャーナリスト
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 後者の問題点について、列車の運転士は、車両が男性と接触した際に衝撃を感じたことは認めているが、鳥や小動物であろうと考え、そのまま走り続けたという。これは運転士の言い逃れとはいえない。というのも、運転士が線路上にもしも人影を発見したのであれば、即座に非常ブレーキを作動させたはずであるからだ。

 いったん小倉駅に停車したにもかかわらず、車両の破損に気づかず、出発してしまった点にはいろいろと問題は多い。本来であれば、ホーム上の駅員が気づくべきであろうが、時速100kmほどで駅に進入する列車の先頭部分を瞬時に確認することは困難だ。

 運転士が車両から降りて確かめればよいという意見ももっともで、まずは駅員であるとか、地上の総合指令所に連絡を取って降車の許可を得た後に見ればよかった。しかし、手続きは面倒なうえ、列車は確実に遅れてしまう。義務付けられた作業でない限り、運転士としては車両から降りて確認などしたくないはずだ。

最も深刻なものは9日の殺傷事件

 17日に起きた新幹線のパンタグラフに鳥がはさまるトラブルは、筆者の記憶ではそう多くはないと考える。ただし、鳥を含めて小動物が新幹線の車両と接触するトラブルは、件数は不明なものの結構多い。ご存じの方も多いように、航空機が鳥と衝突するバードストライクは頻発しており、国内だけでも年間1600件に達するという。空港の周辺では専門のパトロール担当者が銃器や煙火、スピーカーなどを用いて鳥を追い払っているそうだが、それでもいま挙げた件数が発生している。なお、新幹線では線路の保守担当者が鳥を見つけた際には音などで追い払うことはあるものの、専門的なパトロールは実施されていない。

 6月20日までの時点で同月に起きた新幹線の一連の事件、トラブルで最も深刻なものは9日に起きた殺傷事件だ。理由は2点あり、ひとつはいうまでもなく死者が生じたという点、もうひとつは、本稿執筆の時点でも同様の事件を防ぐことはできないという点である。ここでは2番目の理由について考察していこう。

 事件後、新幹線の列車の車内で実施される警備が強化されたそうだ。しかし、今回の事件のように旅客が携えたバッグなどから刃物を取り出して、隣の席の人を刺す行為を未然に防ぐことは大変難しい。最初の一撃で致命傷を負った場合は取り返しがつかないからだ。もちろん、車内の警備を強化することには意味があり、刺した人をすぐに取り押さえられるので被害を軽減させる効果は期待できる。

 以上が4件の事件やトラブルのあらまし、そして簡易な考察だ。これらのうち、早急に対策が必要なものは9日に起きた殺傷事件、それから14日に起きた人身事故だ。その試案を次回、説明したい。
(文=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)

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