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今年世界最大の上場、中国シャオミの「得体の知れない」経営…勝負挑める日本企業なし

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 シャオミが目指す市場拡大プロセスを具体的に示すと、次のようになる。まず、シャオミは自らデバイス(スマートフォンなど)を生産し、販売拡大によって顧客の潜在的な基盤を手に入れる。同社のスマートフォンユーザーが増えれば増えるほど、その経済圏は拡大する可能性がある。なお、雷軍CEOは「ハードの利益率は5%以下に抑える」と明言している。それは、同社がスマートフォンを成長のエンジンに位置付けていないことの裏返しだ。スマートフォンの開発は市場拡大の手段といえる。

 その上で、最新のテクノロジーを搭載したモノ(白物家電など)や、フィンテックなどのサービスを生み出す。それを、シャオミのインターネット網を用いて顧客に提供する。そうすることで、シャオミは人々が自社のモノやサービスを使って生活する環境を生み出そうとしている。

業種という概念になじまないテクノロジーの進化

 
 シャオミの売上高の70%は、スマートフォン事業からもたらされている。しかし、事業ごとの利益率などを見ると、シャオミをどの業種に位置付ければよいか、判断は難しい。これは重要な示唆を含んでいる。テクノロジーが進歩し、その活用が進むにつれて、“製造業か、サービスなどの非製造業か”という分類が、適切ではなくなるということだ。

「シャオミはスマートフォンメーカーだ」と考えてしまうと、同社が目指す将来の姿をわかろうとすることは難しくなるかもしれない。シャオミのようにIoTビジネスを重視する企業を理解するには、わたしたちが慣れ親しんだ常識ではなく、その経営者(企業家)の発想を、虚心坦懐に考えることが欠かせない。

 加えて、シャオミの意思決定は速い。理由は、傘下にある企業の所有権を、雷軍CEOが握っているからだ。インドのスマートフォン市場でシャオミがトップのシェアを得たのも、意思決定の速さに負うところが大きいだろう。テクノロジーの進化が環境の変化を加速化させているだけに、企業全体での迅速な意思決定の可能性は、有利に競争を進める重要な要素だ。

 IPOによってシャオミが成長のための資金を手に入れれば、その影響はより大きくなる可能性がある。現状、わが国にシャオミと互角に競争できる企業があるかと考えると、簡単には思い浮かばない。ソニーなどの状況を見ていると、わが国の企業は低価格化が見込まれるスマホの部品メーカー(サプライヤー)としての性格を強くしているように見える。

 シャオミの成長を見ていると、成功に固執せず、ヒット商品の創造を追求し続けることの大切さがわかる。シャオミの場合、ネットワーク・テクノロジーを活用し、新しいモノをより低い価格で提供することが成長を支えた。その上で、同社はイノベーションを通して、消費者が欲しい、使いたいと思ってしまうモノやサービスを生み出そうとしている。それが実現できれば、成長は可能だ。わが国でも、そうした考えを重視する企業が増えることを期待したい。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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