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熱戦が続くFIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会。7月1日のロシア対スペイン戦は、PK戦の末にロシア(FIFAランク70位)が“無敵艦隊”と称される優勝経験国スペイン(同10位)を破ってベスト8進出を果たした。
この日はモスクワをはじめ、3日に日本対ベルギー戦が行われた人口110万人の大都市ロストフ・ナ・ドヌでも、夜通し興奮したサポーターや市民が街に繰り出して奇跡の勝利に酔っていた。
開催国が地の利を生かして躍進する例といえば、2002年の日韓W杯のときの韓国のベスト4が鮮烈な印象を残した。ロシアの次の相手は、クロアチア(同20位)だ。勝敗の予想はつかないが、接戦の好ゲームになることは間違いないだろう。
一方で、やっかいな問題が浮上している。ロシアの思わぬ活躍が「“眠れるライオン”を叩き起こしたのではないか」というのだ。ヨーロッパでは、ロシアはサッカーの実力以上にフーリガンの狂暴ぶりで名を馳せている。1次リーグでは鳴りを潜めていたが、今後は「フィルマ」と呼ばれるロシアの武闘派フーリガンと相手国サポーターおよびロシアの治安当局との攻防も目が離せない状況になりそうだ。
イングランド戦が実現なら波乱の予感?
ロストフ・ナ・ドヌのホテルのベテラン女性スタッフが、ロシアがスペインを破ったことに狂乱する男たちを見ながら、ふと漏らした。
「W杯でお客さんが来てくれるのはうれしいんだけど、一番の心配はこれ。男たちは見境がなくなるのよ。ロシアの活躍は歓迎だけど、痛し痒しね」
どちらかといえば、ロシア社会におけるサッカーは「信用されていないスポーツ」のようだ。試合がある日は子どもをスタジアムに近づかせないようにする親も多いという。ロシアで人気のスポーツは、氷上のアイスホッケーやフィギュアスケートだ。
サッカー場も多目的コート兼用が多く、バスケットボールなどを含めて冬場の利用が主目的だ。相対的に見てロシア内では地位の低いサッカーだが、人気がないわけではない。プロリーグのファンは多いし、ほとんどの人がスタジアムでの観戦経験がある。
ロシアのチームの人気ベスト3は、本田圭佑選手が所属したことがあるPFC CSKAモスクワ、FCスパルタク・モスクワ、FCディナモ・モスクワだ。しかし、UEFA欧州選手権(EURO)などでもあまり活躍できていない。にもかかわらず、熱狂的なファンが多いという事実が興味深い。
ロシアでは17年6~7月にFIFAコンフェデレーションズカップが開かれたが、その際にロシアのフーリガンはこう宣言していた。
「W杯は俺たちにとって最高のフェスティバル。おおいに暴れまくってやるぜ」
「堂々と戦ってやろうじゃないか。どんな戦いにも応じてやるぜ」
こうした声がメディアを通じて堂々と伝えられるところにも、ロシアにおけるフーリガンの“歴史”が垣間見える。また、こんな声もあった。
「何がなんでもイングランドの奴らは叩きのめしてやる。楽しみだぜ」
当時は、まだW杯の組み合わせも決まっていない時点での“ホラ”にすぎなかったため、問題視されることはなかった。しかし、スペイン戦の勝利によって、にわかに状況が変わりつつある。