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スズキ、インド新車市場シェア50%確保へ…世界的企業へ飛躍かけ10年の超長期計画始動

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 また、自動車業界ではコネクテッドカー(ネットワーク空間と相互にデータや情報の送受信を行い、自律して走行を行う移動型のデバイス)の開発が重視されている。コネクテッドカーの開発は、EV化に続くと考えられる変化だ。時間軸でいえば、EVよりも長めの目線で考えることが適切だろう。そうした展開を見越して、スズキトヨタとの提携を深め、変化に対応しようとしている。

彼を知り己を知れば百戦殆うからず

 以上からスズキは、自社の強みと弱みを客観的に理解している企業だといえる。それがあるから、長期的な視点でインド市場での競争力を引き上げるために資源を投じるという“選択と集中”ができる。

 インド市場と対照的に、スズキが苦戦している市場もある。それが中国だ。2017年、中国におけるスズキの生産台数は前年比3割減少した。その理由は、SUV人気に代表される車体の大型化だ。小型車の分野で強みを持つスズキにとって、この環境は分が悪い。すでにスズキは、中国企業との合弁のひとつを解消すると発表した。理由は、スズキにとって大型車の分野での競争力の引き上げに資源を投じるよりも、リストラを進め得意分野に経営資源を再分配したほうがよいからだ。

 問題は、これまでの取り組みに見切りをつけることが、口で言うほど容易ではないことだ。行動経済学の心理勘定の理論が示す通り、私たちはこれまでに投じた費用(サンクコスト)をなんとかして回収したい。見方によっては、スズキの中国事業のリストラも遅いといえるかもしれない。

 このように考えると、スズキは“彼を知り己を知れば百戦殆うからず”という孫子の考えを、ひたむきに実践している企業だ。小型車という自社の強みを理解しているからこそ、業績が好調な時に強化すべき分野に焦点を絞り、集中的に資源を投入することができる。まさに、今がチャンスということだ。

 反対に、強みをしっかりとピンポイントで理解できていなければ、あれやこれやと手を広げたくなってしまう。業績が拡大している場合は、なおのことそうだ。株主総会の決議内容などを見ていると、スズキがそうした誘惑に惑わされていると感じられる部分は見当たらない。

 インド自動車市場での競争力引き上げを目指す“本気”の裏には、スズキの確たる信念が窺われる。見方によっては、EV化という変化は、スズキがインドでの事業基盤を強固にするチャンスとなる可能性もある。たとえば、スズキが政府との関係を強化し、同国でのEVの規格設定に発言力を発揮できれば、同社の競争力は一段と高まるだろう。スズキがダイナミック発想とともに、さらなる成長を目指すことを期待したい。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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