小谷寿美子「薬に殺されないために」

毛染め、繰り返し使用で健康被害・死亡例の報告も…腎不全、中枢神経に変化、脾臓肥大


 花粉症と違うのは、原因物質と接触してから症状が出るまでの時間です。花粉症は感作が成立してしまえば、花粉を吸えばすぐくしゃみや鼻水が出ます。しかし、パラフェニレンジアミンによるアレルギーは2~3日後にあらわれます。毛染めをした数日後に皮膚症状が出ます。

GHS分類によると、肝臓、神経、腎臓にも障害が出ることがわかる

 GHS分類とは、化学品の分類および表示に関する世界調和システムのことです。化学品の危険有害性を世界的に統一された一定の基準に従って分類して、絵表示等を使ってわかりやすく表示しています。災害防止や人の健康と環境の保護に役立てています。区分1がもっとも危険とされ、数字が増えるごとに安全性が高まり、区分4が比較的安全なものとされます。

 パラフェニレンジアミンは皮膚感作において区分1Aとされています。その根拠もあげられています。モルモットのビューラー試験(動物に原因物質を注射したり塗ったりして反応をみる試験)で全例に陽性反応が見られたとのデータ(CERIハザードデータ集 2001-31<2002>;List 3)があり、この物質はEU分類でR43(皮膚感作性があるという意味)である(EC-JRC<ESIS><Access on July. 2011>)。さらに日本産業衛生学会で感作性物質「皮膚・1群」(産衛学会勧告<2010>)、ACGIH(アメリカ合衆国産業衛生専門官会議)では「skin sens」(ACGIH-TLV<2011>)に分類されていることがあります。

 これによると、皮膚症状以外にも気になる症状について記載されています。それが発がん性です。GHS分類では「分類できない」とされています。動物実験では、発がん性について根拠は得られていません。ヒトにおいて毛染めを使っている方で発がん性があったという報告があるものの、その原因がパラフェニレンジアミンであるかという決定的な証拠は得られていません。

 しかし、繰り返しばく露を受けた人については区分1(肝臓、神経系、腎臓)です。心臓と筋肉については区分2です。その根拠について、パラフェニレンジアミンを含む毛染めを使用したヒトの症例として、以下の報告があったことがあげられています。

・肝腫大と脾臓肥大および進行性神経障害の発症(ACGIH<2001>)
・5年間にわたる職業ばく露では黄疸と肝臓の亜急性萎縮により死亡した例(ACGIH<2001>)
・消化器と神経症状が観察された例
・中枢神経系に病理学的変化が認められた例(DFGMAK-Doc.6<1994>)
・その他に慢性腎不全、尿毒症、腎臓の極小化、糸球体の硝子化(腎臓のフィルターがガラスのように固まってしまい機能しなくなる)を伴い死亡した症例(DFGMAK-Doc.6<1994>)
・乏尿、脈管炎、筋痛、腎臓肥大、糸球体腎炎を発症し死亡した症例(DFGMAK-Doc.6<1994>)

 何度も毛染めを繰り返す人や職業的に毛染めをしなくてはいけない美容師の方は、これらの症状にも注意が必要だといえます。
(文=小谷寿美子/薬剤師)

編集部のイチオシニュース
Pick Up News

人気記事ランキング

連載

ビジネス

総合

SNS