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田中圭太郎「現場からの視点」

日大、不当な講師一斉雇い止めで労基法違反の疑い…刑事告発と提訴相次ぐ、報復恐れる講師も

文=田中圭太郎/ジャーナリスト
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 問題は大学から断られた時だ。実際に、今年3月末までには、長年働いてきたにもかかわらず「今年で契約を終わりにしたい」と言われるケースがあったという。

「断られた場合は、労働局に相談して、労働局から大学に指導してもらったほうがいいでしょう。または組合に加入して、団体交渉をすることで、大学側に間違いを気づかせることができます。労働契約法という法律の内容が変わった以上、非常勤だからといって、簡単に解雇することは許されていません」(同)

 また「就業規則が変わったので、5年が上限になりました」と断られた場合は、日本大学が告発されているのと同様に、法律に沿った手続きが行われていない場合もある。

 労働基準法第90条では、就業規則を変更する場合、労働者の過半数が加入する労働組合か、労働組合がない場合は、全労働者のなかから過半数代表者を選出して、意見を聞くことを定めている。過半数代表者は選挙によって選ばれなければならない。日本大学の場合は立候補した人物を不信任投票で選んだために、違法の疑いがあるとして刑事告発されている。

 ほかにも「就業規則が変わって、10年以上働かないと無期雇用に転換できない」「権利が発生するのは10年以上働いてから」などと説明する大学が複数あるという。労働契約法の特例として、科学技術に関する研究者やその関連業務を行う人に関しては、10年以上働かないと無期雇用の転換権を得られない。しかし、対象者は決して多くはなく、普通の非常勤講師は適用されないので、このように説明されたときは疑う必要がある。

 いずれの場合でも「就業規則が変わった」と言われたら、過半数代表者の意見を聞く手続きが行われていない可能性があるので、確認が必要だ。

あきらめずに交渉を

 今回取り上げたケースは、相談会で実際に寄せられたものだ。同様の問題は、大学に限らず、民間企業でも起きていると考えられる。特に無期雇用を断られたときや、突然解雇を伝えられた時は「即答しないことが大切」と志田書記長は助言する。

「辞めてもらいたいと言われた時には、すぐに『わかりました』とは言わないでください。『それは困ります』と言って即答せずに持ち帰って、対策を考えることが必要です。不当な雇い止めの場合は交渉すれば覆りますので、あきらめないでください」(同)

 首都圏大学非常勤講師組合では、教職員から対応に問題があると相談があった大学には、改正労働契約法の趣旨を守るよう交渉を進めている。本来は使用者が正しく法律を理解していれば、起きない問題のはず。大学や企業の人事担当者は、再度法律を確認するべきではないだろうか。
(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)

田中圭太郎/ジャーナリスト

田中圭太郎/ジャーナリスト

ジャーナリスト、ライター。1973年生まれ。大分県出身、東京都在住。97年、早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年からフリーランスとして独立。警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピック、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書に『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書・2023年2月9日発売)、『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)。メールアドレスは keitarotanaka3000-news@yahoo co.jp、 HPはジャーナリスト 田中圭太郎のWEBサイト

Twitter:@k_taro_tanaka

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