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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

食品摂取の多様性が低いと、「抑うつ」リスク増との研究結果

文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士
食品摂取の多様性が低いと、「抑うつ」リスク増との研究結果の画像1「Gettyimages」より

 本連載で、食品摂取の多様性得点をテーマにするのは今回で5回目になる。少ししつこいと思われるかもしれないが、それだけ重要な栄養指標であることが統計分析上明らかになりつつあるため、もう少しお付き合い願いたい。

 すでに、体(強い骨格と筋肉)、知(生活を楽しむ知性)、情(人を優しく思いやる心情)の老化に伴う衰えが食品摂取の多様性と深く関わっており、多様性の低いシニアほどこの3つの力が早く衰えることを解説した。今回は食品摂取の多様性と「抑うつ」になってしまうリスク、そして次回は病気に加えて自殺や事故など病気以外の死も含めた死因を問わない死、いわゆる「総死亡」リスクとの関係を取り上げる。

 最近、一流企業や研究者の不祥事が相次いでいる。つい先日は強い自殺願望をもつ若者が新幹線内で信じられない殺人傷害事件を起こした。これら問題を引き起こした者や集団は人格形成の枢要である誠実度、社会的価値への適応力、および問題の対処能力が総合的に低下していると考えられる。われわれが社会生活を円滑に営むために求められる能力と度量の要素には、まずは前述した体・知・情がある。そして、抑うつを防ぐのに欠かせない日常的な安寧、安堵の情緒が必須である。

 実はこの安寧を生み、抑うつを予防するのに食品摂取の多様性が深く関わっていることが意外と知られていない。

食品摂取の多様性はわれわれに安寧をもたらす

 筆者らはD市に在住する地域の元気シニア約1000名の研究協力を得て食品摂取の多様性と抑うつの関係について分析調査した。その成果の一部を紹介する。

 老化を遅らせる食生活の手立てを探る2年間の縦断研究によるものである。抑うつ度の測定はGeriatric Depression Scale(GDS)というスケールを用いている。シニア用の抑うつ状態の評価尺度である。別表は日本語版である。(2018.6閲覧)。

 検索エンジンで「GDS短縮版」と入力すれば数多くヒットし、簡単に入手できる。5点以上は軽いうつ傾向、10点以上は重いうつ状態とされる。

 筆者らの研究結果の概略はこうだ。調査開始時の地域シニア1003名(平均年齢、約70歳)のGDS平均値は3.4点で、集団全体としては抑うつ状態ではない。1年後にまったく同じシニア1003名に再調査すると約4点となる。シニア世代は加齢し老化するのに伴い一般には抑うつ度得点は高くなる傾向にある。老化するとシニアはみんなが精神疾患としての「うつ病」になるということではない。しかし“ブルー”になっていくのは事実だ。

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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