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西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

英国、「ひじき」を食べないよう勧告…ヒ素含有、肉・魚介・野菜等にも含有

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授
英国、「ひじき」を食べないよう勧告…ヒ素含有、肉・魚介・野菜等にも含有の画像1「Gettyimages」より

 今回は主として食品と関係のある有害金属について考えてみたいと思います。どんな金属でも、常識外に摂取すれば毒性は出てきます。有害性重金属というのは、摂取する可能性がある金属のうち比較的毒性が強い金属ということになります。ヒ素は非金属に属するため、「ヒ素及び有害性重金属」という言い方が使われます。ヒ素は毒性が強いことは知られていますが、化学形態により毒性が大きく異なります。

大昔から毒性が知られていたヒ素

 
 ヒ素は昔から毒があることが知られていました。古代ギリシアや古代ローマ時代に、すでに暗殺や自殺に用いられていたといわれています。日本では諸説ありますが、少なくとも“石見銀山ねずみ捕り”という言葉があるように、江戸時代、石見国笹ヶ谷鉱山で銅などと共に採掘されたヒ素を含む硫ヒ鉄鉱を焼成してつくられた殺鼠剤(ねずみ捕り)が使われていました。また、忍者は他殺、自殺用に必ず持っていたといわれています。

 近年、ヒ素の怖さが改めて知られたのは、1955年頃に広島や岡山を中心とした西日本で、調製粉乳に安定剤として使用したポリリン酸にヒ素が混入していたため、乳幼児の死亡者134名、患者数1万人を超える大事故が発生したことです。

 これは過去の話ではありません。ヒ素は毒性が強いだけでなく蓄積性があるため、この時に被害に遭われた方々が現在も苦しんでいる事実があります。厚生省(現厚生労働省)はこの事件を契機に、食品衛生法を一部改正して二度とこのような事故は起こさないように、食品添加物に対しては極めて厳しい基準をつくり、「食品添加物公定書」を作成し、安全性や有効性がしっかりとして、かつ消費者の利益になるものだけを許可する制度となりました。現在は第9版食品添加物公定書が刊行されています。

 また、1998年に和歌山で発生したヒ素カレー事件など、ヒ素の毒性は広く知られています。2018年4月には宮崎県のえびの高原(硫黄山)の噴火後、河川のヒ素、カドミウムや鉛等が環境基準値を大幅に上回ったため、市は流域の農家に対し今季の稲作を断念するように要請し、農家側も「やむを得ない」として受け入れたというニュースがありました。おいしくて有名な米の産地であったため、とても残念だったと思います。

 食品中のヒ素化合物は大きく分けて無機化合物と有機化合物に分類されます。無機化合物は亜ヒ酸等毒性が強く、有機化合物は毒性が少ないことも知られています。

 ヒ素は、日本列島の地殻上部では6.5~7.1 mg/kgであり、雨水、海水には1.2~1.6μg/L程度含まれているといわれています。自然界に広く分布しているため、食品を検査すると広範囲の食物から微量検出されます。

 ヒ素は悪いばかりでなく、必須元素といわれています。また、低濃度のヒ素化合物によって植物の生育が促進されることや、ヒ素化合物の散布によってカンキツ類の成熟が促進され、全糖含量やフラボノイド含量が増加することが報告されています。しかし、高濃度のヒ素化合物は、発芽の抑制や幼植物の葉が巻いたり、しおれたりといった生育抑制や生育阻害作用を示すことも知られています。

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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