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北條元治「自分の家族を守るための医療の話」

健康な子宮や卵巣を不必要な手術で切除横行…医師免許持たない理事長の産婦人科病院で

文=北條元治/セルバンク代表取締役、医学博士

 富士見産婦人科病院では、超音波(エコー)で子宮に腫瘤が見つかった症例に、かなりの頻度で子宮摘出術を勧め、それを行っていた。その当時のある学術論文では、この腫瘍は悪性化すると書いてあったが、別の学術論文ではしばらくは経過観察でもいいと書いてあった。医師であれば、これらの相反する2つの学術論文の一方を盲目的に信じるのではなく、自身の医学的知識を背景に、症例ごとにきめ細かく、子宮を摘出することによる患者の医学的利益(がん予防)と医学的不利益(妊孕性の喪失)を天秤にかけて考えて、最終的に治療(手術)をするかしないかを決定する。

 この決定には経営的見地など一切の邪念が入ってはならない。もちろん、正確な医学的知識を持たない者には医学的利益を過大に評価してしまう可能性もあり、その患者の利益・不利益のバランスを正確に判断することなどできない。富士見産婦人科病院では、医師ではない理事長がエコーの診断に意見を付けたり、自分自身でもエコーを操作していたことなどが明らかになった。彼は医師法違反で逮捕されたが、理事長には明確な悪意はなかったのかもしれないが、経営サイドの視点しか知らない理事長は「悪性化する」という表層のファクトを根拠に、配下の医師たちに有形無形の圧力をかけていた可能性は否定できない。

 もちろん医師のなかにも経営的視点を持つ者もいるが、医学的バックグラウンドがなく経営サイドの視点を持つということと、医学的バックグラウンドを持ち、かつ経営サイドでモノを考えるということはまったく意味合いが違う。

日大アメフト問題との共通点

 この事件をきっかけに、国も動いた。事件発覚後の昭和60年(85年)年12月27日に「法律第109号をもって公布された医療法の一部を改正する法律」を公布した。その法律で、「例外を除き医療法人の理事長は医師(歯科医師)以外が就任してはならない」と規定された。翌年の局長通達(健政発第410号)でも、この法律の意図は「医師又は歯科医師でない者の実質的な支配下にある医療法人において、医学的知識の欠落に起因し問題が惹起されるような事態を未然に防止しようとするものである」とされた。

 学校法人と医療法人は、学生や患者の人生を大きく左右する事業を行っている。今回の日大アメフト事件の根底には、学問の見識がない者が運営のトップに就いていることがあると考えてしまうのは、はたして私だけだろうか。
(文=北條元治/セルバンク代表取締役、医学博士)

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