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松村太郎「米国発ビジネス&ITレポート」

インスタが、新たな動画アプリを「あえて」別アプリとしてリリースした巧妙な戦略

文=松村太郎/ITジャーナリスト

アプリを分けた裏には戦略がある

 Instagramは、IGTVを別のアプリとしてリリースしたが、Instagramアプリ内でも再生可能であるため、必ずしもIGTVをダウンロードしなくても動画が楽しめる。それでもアプリを分けた理由についても、いくつかの戦略が透けて見える。

 一つは、既存のビジネスモデルとは異なるエコシステムをつくろうとしている点だ。現状、Instagramは一般ユーザーと企業広告主という2つのプレイヤーしか存在せず、一般ユーザーは無料であらゆるコンテンツの閲覧や投稿が可能で、広告主はコストを支払って、ターゲットに対して広告を表示させる仕組みを利用できる。

 しかしIGTVには、今後コンテンツ制作で収益を上げていくことになるクリエイターやインフルエンサーという新しい役割が登場する。彼らがコンテンツを投稿したり、さまざまな管理を行うためのアプリとして、Instagram本体とは別のアプリとしてリリースしたことが考えられる。

 もう一つは、スマホ中毒回避の流れだ。IGTVによって1分以上、最長1時間のビデオがInstagramに流れてくることになる。本体のアプリの中で長い時間の動画視聴が定着することで、Instagramのアプリ使用時間は延びることが期待できる。

 しかしAppleやGoogleは、ユーザーのスマホ利用時間を減少させようとしており、アプリごとの使用時間制限を施す機能まで導入した。そしてスマホ中毒対策やデジタルデトックスで真っ先に制限がかけられそうなのが、InstagramやSnapchatなどの若者向けSNSアプリだ。使用時間が長くなる動画視聴を別のアプリにすることで、Instagram本体の使用時間を“見かけ上”長くならないようにする狙いも透けて見える。

 もちろんこのことは、Instagramに広告を出稿している広告主に対しても、動画視聴で広告が見てもらえなくなったり、アプリ使用時間制限で広告表示機会が失われる可能性を最小限にとどめる施策としてアピールできる。

 InstagramはSnapchatが導入した24時間で写真やビデオが消えるストーリーズをコピーし、Snapchatへの若者の流出を抑えた。今度はビデオプラットホームに取り組み、場合によってはYouTubeよりも高いブランド価値を保ちながら収益を上げる、モバイルビデオのスタンダードの地位を獲得するかもしれない。

 YouTubeを手がけるGoogleは、Instagramのようになりふり構わずIGTVを分析して対抗しない限り、その流れを止められないのではないだろうか。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)

松村太郎/ITジャーナリスト

松村太郎/ITジャーナリスト

慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、ジャーナリストとして独立。テクノロジーとライフスタイルの関係を追いかける。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、テクノロジーの震源地であるサンフランシスコ・シリコンバレーを現地で取材した。
学校法人信学会 コードアカデミー高等学校

Twitter:@taromatsumura

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