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山崎将志「AIとノー残業時代の働き方」

都立の杉並高校吹奏楽部が、全国大会の常連校になれた秘密

文=山崎将志/ビジネスコンサルタント
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高校生でも顧客志向

 我々ビジネスパーソンは、この吹奏楽部の例から何を学ぶことができるでしょうか。映像では、指導者の熱意と、彼の「目標を高く持ち、絶対にできると信じろ」という言葉がハイライトされていましたが、私はそれ以外にも、この全国大会常連の吹奏楽部には、これから述べる2つの仕組みが隠されていると思います。

 まずひとつは、顧客志向であるという点です。

 私の見る限り、彼らのゴールは「パフォーマンスによって人を楽しませる」ことです。先ほどお話しした、私が厳しい高校生の部活としてイメージする「ミスをせずに譜面どおりの演奏をする」というゴールを持っているチームと、そのゴールを達成するプロセスに、どのような違いが生まれるのでしょうか。

 ミスをせず、譜面どおりの演奏をすることをゴールにした活動プロセスにおいては、減点法、つまりマイナスを減らすための取り組みを練習で行うことになります。一曲弾けたら、次はもっと難しい曲、というふうに、主に技術の習得を中心とした訓練となるはずです。また、楽器の演奏がもっとも重要なことであり、それを演奏している姿は、自然体に見えるなど、マイナスを減らすことに注力することとなるでしょう。

 その一方で、「パフォーマンスによって人を楽しませる」ことをゴールにすると、「完璧な演奏をする」ということは、そのゴールの前提条件になります。ですから、目標を変えた瞬間に、今までの最終目標は、過程としての目標に変わってしまうのです。同時に、聴衆に楽しんでもらうためには、演奏以外の部分も重要です。演奏する姿は単に自然体に見せるということを超えて、笑顔で楽しそうにする。さらには、動きを取り入れて派手に演出する、ということもやりたくなってきます。こうした演出に注力するためには、楽器の演奏以外のことに集中していても、演奏できるほどのレベルになっていなければなりません。ですから、完璧な演奏は、ゴールではなく出発点となるのです。

 さらに、「聴衆を楽しませる」ためには、「どうしたら楽しくなるか」とまず考える必要があります。「楽しませる」ことには終わりがありませんから、試行錯誤しながらもどんどん進化していかざるを得ません。譜面どおりに演奏するゴールでは、譜面どおりにできた時点でミッション達成であるのと対照的です。

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