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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

フリーメイソンだったモーツァルトは、名作オペラ『魔笛』のせいで暗殺されたのか?

文=篠崎靖男/指揮者
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 ところで、こういう話があります。啓蒙思想の沸騰ともいえるフランス革命の時期でも、パリから遠く離れた農村では、啓蒙思想なんてまったく知られていませんでした。地方の農民は、“蒙”だったわけです。そんな彼らに、ルイ16世がギロチンにかけられたニュースが伝わってきます。彼らは、神に授けられた地位である国王が、神をも恐れぬ暴徒たちに殺されたと考えました。そのため、「明日からはもう二度と太陽が出てこない」と本気で信じたそうです。しかし、翌朝の朝日を見て、もう一度驚きます。国王がいなくなっても、何も変わらず太陽は出てきたからです。

 そんな時代ですから、教養があることが会員資格だったフリーメイソン会員の多くによってフランス革命はリードされ、そしてフリーメイソンの信条である“自由・博愛・平等”は、そのままフランス革命のテーマとなり、今もなおフランス国旗の3色は、この3つの信条を表しているのです。

フリーメイソンの儀式をオペラにしたモーツァルト

 さて、モーツァルトがウィーンに来た当時のオーストリア皇帝ヨーゼフ二世は、「啓蒙君主」と呼ばれていて、ついでにいえば彼もフリーメイソンの会員です。皇帝であっても、モーツァルトのような平民であっても、フリーメイソンの場では身分を気にせずに、「人間にとって一番大切なのは博愛だ」と語り合い、人間はみな自由で平等なのだと心をひとつにする。そんな場だったのです。

 モーツァルトが、実際に政治的に敏感な人物であったことを我々に教えてくれるのは、名作オペラ『フィガロの結婚』です。もともとはフランスの舞台劇で、平民である使用人が、貴族である主人をだます、封建制度下では考えられない内容であり、実際に民衆の蜂起を感じ始めていたフランスでは上演禁止でした。しかし、身分制度に対する批判ではなく、「自由、博愛、平等」がテーマだとモーツァルトにいわれると、最初は反対していた啓蒙君主・ヨーゼフ二世も上演を認めざるを得なかったのです。

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