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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

フリーメイソンだったモーツァルトは、名作オペラ『魔笛』のせいで暗殺されたのか?

文=篠崎靖男/指揮者
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 モーツァルトの最高傑作ともいわれているオペラ『魔笛』は、フリーメイソンそのものです。この作品は、王侯貴族でなく一般市民向けの劇場で上演されていたのですが、フリーメイソンの会合で行われる主要な儀式がいくつも取り入れられています。モーツァルトは『魔笛』の作曲後ほどなく亡くなったので、「秘密結社フリーメイソンの儀式を一般市民にまであからさまにしたから、モーツァルトは暗殺されたんだ」と、おもしろおかしく言う人もいますが、それはまったく違います。それならば、『魔笛』の台本を書き、作曲の依頼をした興行主のシカネーダこそ暗殺されるべきですが、彼は殺されていません。ちなみに、シカネーダもフリーメイソンの会員です。

 この歌劇には、大蛇は出てくる、小鳥をつかまえることを生業にしているご機嫌な男が嫁探しをする、夜の女王は派手に声を張り上げる、舞台には火や水の場面があるなど、今で言うと、ディズニーミュージカルのような賑やかさですが、これに極上の音楽をつけたモーツァルトは、やはり“大天才”です。一方で、それを見ながら時には大声で笑ったに違いない一般民衆たちにとって、フリーメイソンの内容はわからなくても、よく知られた存在だったのでしょう。

 その後、啓蒙思想とともにフリーメイソンは、王侯貴族や教会の権威を脅かす存在として縮小を余儀なくされますが、今でもウィーン市立博物館にはフリーメイソンに関する部屋があるくらい、“陰謀の秘密結社”という存在とは程遠く、ロータリークラブやライオンズクラブのように、現在でもアッパークラス(上流階級)の社会的ステータスでもあります。

 フリーメイソンは、「世界を牛耳った組織」というよりも、世界を牛耳るような力を持った大物政治家や経済人、著名文化人が入会していたというほうが正確かもしれません。
(文=篠崎靖男/指揮者)

フリーメイソンだったモーツァルトは、名作オペラ『魔笛』のせいで暗殺されたのか?の画像2
●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。ジャパン・アーツ所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

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