他の医大でも裏口入学が行われている可能性
医大に入っても、医師国家試験に受からなければ医師にはなれない。裏口入学させた後、そのハードルをいかにして越えさせるのだろうか。
「国家試験の壁がありますから、そんなに多くは裏口入学させてはいないでしょう。東京医科大は入学者の出身高校別人数を公表していますが、今年は1位が海城高校、2位が浅野高校、3位が慶應高校で、東大や京大にもたくさん生徒を送り出している進学校ばかり。医学部に入るのが不自然だなという高校の出身者はいません。昨年度の東京医科大の医師国家試験の合格率は97.1%で全国平均より高いです。ボーダー線上の受験者であれば小論文や面接でいかようにもできますけど、今回の場合、失礼ながら相当にできない子を入れてしまったということが、露見の原因の一つかもしれません。
報道を見ると、彼の高校時代の評定値が5段階の3.9だといわれています。これでは、医大に限らず有名な私立大学にはどこも入れません。4.2以上じゃないと厳しい。入れてしまえば国家試験に受かるかどうかは自己責任と考えていたのか、6年間のうちに引き上げようとしていたのか、そのあたりはわかりませんけど」
法学部に入って司法試験を受けない学生はいくらでもいるが、医科大学で国家試験に合格できずに医師になれなかった場合、どうなるのだろうか。
「いやあ、そうとうに悲惨じゃないですか。専門の勉強しかしてないですから、他に道がありません。専門的な世界で、一般的な世界との接点も少ないですから。過去に調べようとしたことがあるのですが、例が少ないし、そういう人は隠そうとするから見つからないんですね」
東京医大以外でも、裏口入学というのはあるのだろうか。
「東京医大というのは、難易度の高い大学です。それでも裏口入学があるんだから、難易度の低い大学でもあるかもしれません。1つの目安が、成績開示申請ができるかどうかです。今ほとんどの大学でこの制度を設けていて、不合格者が申請すると試験の成績を教えてくれます。この制度を設けていないのは、医科大学だと東京医大を含めて十数校しかありません。ただ単に不親切なのかもしれませんけど、開示するとまずいことになるという懸念があるのかもしれませんね」
教育を司る文部科学省の幹部が裏口入学に手を染めていたのだから、推して知るべしというべきか。
(文=深笛義也/ライター)