湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

ソニーはサムスンの足元にも及ばないという歴然たる現実…半導体1兆円投資は失敗濃厚


 一方、任天堂は「もう半導体の高性能化に頼るゲーム機の開発はやめた」と言って、MEMSによる加速度センサと半導体を融合させ、Wiiを開発して販売していた。そのコンセプトは、「子供がゲーム機を買ってもらう場合、一家の財務大臣はお母さんである。だったら、お母さんが楽しめるゲームにしたらどうだろう」というものだったと聞く。なお、MEMSとは「Micro Electro Mechanical System」の略で、半導体の微細加工技術等を用いて加工した微細な電気的機械的な部品のことである。

 それで結果的にどちらが勝ったかというと、図2から明らかなように、任天堂のWiiの圧勝だった(2007~2009年頃)。そこで講演では、このようなデータを示して、「PS3は、Wiiの破壊的イノベーションに負けた」と言ったら300人ほどいた会場は凍りついてしまった。


 講演後にソニーの技術者と話をしたら、「これまでにない高性能なPS3はイノベーションを起こしたんだ、そこに搭載されているCellもイノベーションを起こしたのだ」と本気で訴えたのである。つまり、ソニーの技術者の頭の中は、「イノベーション=技術革新」となっており、高性能なCellを開発し、高機能なゲーム機をつくった時点でイノベーションが起きたと思い込んでいた。そして、「売れないのは営業の連中が無能だからだ」というようなことを言った。

壊滅した日本DRAM産業を髣髴とさせるソニーのCMOSセンサ

 講演では、ソニーのCMOSセンサにも切り込んでいった(図3)。2009年当時、ソニーのCMOSセンサは、売上高シェア22%で世界1位だった(現在は約50%)。ところが、ユニットシェアは、たったの4.7%しかなかった(2015年に約20%に増加)。


 つまり、ソニーは単価が高い超高画質のCMOSセンサしかつくっておらず、これがアップルのiPhoneに採用されたため売上高シェアは高かったが、個数のシェアは他社にまったく敵わない状態だった。

 この状況を説明して、「スマホはいずれ廉価版が普及してくる。その時のために、多少性能を落としても、低価格なCMOSセンサを開発するべきである」と述べた。さらに、「今のソニーのCMOSセンサは、メインフレーム用に25年保証の超高品質DRAMを開発し、PCの時代が来てもそれをつくり続けたために壊滅した日本DRAM産業を髣髴とさせる」と言ったら、再び、講演会場は凍りついてしまった。

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