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『西郷どん』久々の「良回」、歴史はイマイチだが恋愛描写は秀逸…いよいよ西郷隆盛が覚醒?

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第29話「三度目の結婚」が5日に放送され、平均視聴率は前回から0.5ポイント上がって11.6%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。

「三度目の結婚」というサブタイトルの通り、西郷吉之助(鈴木)が幼なじみの糸(黒木華)を妻に迎える顛末を描いた回だった。嫁取りの話にほぼ1話丸ごと費やしたのには賛否両論がありそうだが、現代的価値観からは批判を浴びそうな「奄美大島に妻子を残してきた西郷が薩摩で新たに妻をめとる」という史実をうまく処理した点は良かった。

 吉之助は糸の家を一人で訪ね、「妻になってほしい」と単刀直入に告げる。子が生めずに離縁されたことを理由に断ろうとする糸に、吉之助は重ねて言う。

「自分は今、日本中がひっくり返るような、とんでもないことをしようとしている。一蔵(瑛太)にはわかってもらえなかったが、糸なら自分の志をわかってくれそうな気がした。一人でもわかってくれる人がいたら、心強い」

 この前段で、吉之助は確かに「日本中がひっくり返るようなとんでもないこと」を言い出していた。その後も妻をめとろうなどという気はさらさらなかったが、一蔵の妻・満寿(美村里江)の取り計らいで糸と引き合わされたのをきっかけに、糸なら同志になってくれると思ってプロポーズしたというわけだ。糸が子どもの頃から男勝りで賢かったという描写が伏線になっていることは言うまでもない。

 なかなか「いい話」にはしにくいだろうと思っていた糸との結婚が、これほどまできれいに美談に転化されるとは正直言って思っていなかった。この部分に関しては、久々の「良回」だったと言える。吉之助が歴史の流れから取り残されていた奄美大島編が「おもしろい」と好評だったことから見ても、脚本の中園ミホ氏は、歴史パートから離れて恋愛や家族関係を描くパートになると明らかに筆が乗っているようだ。裏を返せば、やはり歴史を描くのは苦手で、苦労しているのかなと少々気の毒にもなってしまうのだが。

 第29話では、曲がったことが大嫌いな「いい人」ぶりが徹底していた吉之助の“ブラック化”がわかりやすく描かれたのもよかった。いつものように島津久光(青木崇高)に難癖を付けられると、自分が間違っていたと平身低頭して平謝りし、涙をぼろぼろと流したのだ。いつもなら、自分は間違っておらず、むしろ久光こそ間違っていると食ってかかっていたのに、この変わりように久光も思わず拍子抜けした様子で、西郷のフォローを一蔵に命じた。

 後から、似合わないことをするなと一蔵にとがめられた吉之助は、「久光に取り入るためなら媚びも売るし偽りの涙も流す」と、覚悟を決めた顔で告げた。さんざんNHKが「西郷は革命家として覚醒しますよ」と宣伝していたわりに、いつ変化したのか結局よくわからなかったが、いずれにせよ、もう昔の西郷ではないことがはっきり示されたことに大きな意味がある。家族や旧知の友人と話す時の屈託のない笑顔と、目的のためならなんでもする策士の顔との両面が描かれるようになったことで、吉之助の人間としての魅力がグッと増してきた。この勢いのまま、明治維新へと突き進んでほしい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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