――GACKTはスピンドルを売り抜け、莫大な利益を得たとの報道もあります。
伊藤 ファウンダーという創業メンバーは、ロックアップを厳しく課せられ、スピンドルを簡単には売れません。GACKTがどれだけ創業メンバーとしてスピンドルを付与されたのか、明らかにはなっていません。ただし、仮想通貨は売買の履歴が追跡可能であり、「GACKTが売り抜けた」と公言している人もいるということは、実際に追跡した人がいるのだろうと想像しています。
――ブラックスターはGACKTの応援や野田総務相の後ろ盾もあるということで、仮想通貨の世界では大きな存在なのでしょうか。
伊藤 仮想通貨やブロックチェーンの世界は実は狭い社会なのです。その世界でブラックスター元社長の宇田修一氏は有名ですが、創業メンバーの1人である宇田氏が過去に関東財務局から行政処分を受けて、“金融業務を行うのはふさわしくない”という評価を受けていたというのはまずいでしょう。
反社会的勢力も利用するICO
――ブラックスターやGACKTを警視庁もマークしているという報道もあります。
伊藤 スピンドルは金融商品ではないので、金融商品取引法の範囲内で裁くことはできません。裁かれるとすると、「金融商品でないのに金融商品のように売った」という理由で金融庁により処分が科されるかもしれません。損した投資家が詐欺だと訴えても、一応ルールに基づいて業務を行っていますので、詐欺という筋も成り立ちにくいです。偽計の広告で集めたという訴訟方法も、ブラックスターは「ホワイトペーパー」を作成しているので、偽計取引での訴えも難しいです。
ただ、ブラックスターは登録業者でないのに仮想通貨を売ったということで、資金決済法違反の疑いがかかる可能性はあります。仮想通貨の「売買」および「他の仮想通貨との交換」を事業として行う場合には、必ず仮想通貨業者の登録をしなければならないのです。これについてブラックスターの弁護士は、「スピンドルは一号・二号仮想通貨にあたらない、だから国内でも販売できる」と主張しています。そもそも仮想通貨トークンで逮捕事例はありませんし、現時点でもどの法に違反しているかも明白ではないのです。ですから、一部報道にあった警視庁が動くということは、今はあり得ません。
――結局、問題の本質はなんでしょうか。
伊藤 仮想通貨そのものより、もっと厳しい目を向けるべきものがICOです。実はかなり詐欺が多いのです。かたちだけの「ホワイトペーパー」やトークンを提出して、上場もどこか海外のわからないところで行って、それで出資者を騙すことはよくあることなのです。これは日本も海外も同じです。しかも、反社会的勢力がお金をロンダリングする格好のステージになっています。
GACKTは先端の金融システムを動かせる人間というステージアップを図りたかったのではないでしょうか。新しいものは稼げますが、実は際どい人が多い。約20年前にITブームの頃、アイディア一発で多くの会社が生まれましたが、現在はかなり淘汰されました。残った会社が健全経営を進め、ネット広告や通販業務を行っています。ICOも同じく一部詐欺師や反社会的勢力に利用されていますが、何年後かわかりませんが、淘汰後に健全な経営による円滑な資金調達で再評価されていくでしょう。
(構成=長井雄一朗/ライター)